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zoom RSS 32)『日本という国』 小熊英二

<<   作成日時 : 2006/08/05 01:46   >>

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中学生以上の全年齢対象で書かれた「よりみちパン!セ」シリーズの一冊。「学校でも家庭でも学べないリアルな知識満載」の謳い文句に、間もなく三十路を迎えるわたしは少し赤面してしまうけれど(といいつつ図書館ではいつも小学生に混じって児童書コーナーをうろうろしている)読んでいくうちにさらに赤面。だって、日本に住んでいる日本人のくせに全然この国のことについて知らないんだもの。恥ずかしい。

本書は、日本の近代化がはじまった明治時代について書かれた第一部と、戦後から現代にいたる歩みについて書かれた第二部の二部構成。
学歴社会が福沢諭吉から始まったということは誰もが知っていることだと思うが、『学問のすゝめ』の有名な「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」という一節には「…といわれるけど、現実はそうじゃないよねえ」という意味の続きがあった、ということを本書を読んではじめて知った。福沢はその「格差」を学問をしっかり修めたかどうかだと述べている。まさに学問の勧めである。

第一部は歴史のお勉強の感が強かったが、第二部は戦後から現代だから当然現在も射程に含まれる。ここのところを読んで、今まで ??と思っていたことがずいぶんと消化できた。

たとえば、アジアの一部の国から終戦後何十年も経ってから(もっとも、戦争に巻き込まれたすべての人にとっては、生きているかぎりあの体験が真に「終る」ということはないのだろう)日本に対して賠償請求の訴えが起こったけれど、どうして今になってそんなことをいうのか? もっと早くに言えばよかったのに、と思っている人は多いのではないだろうか。わたしもその一人。あれは独裁政権が不満を抑え付けていたのか。

また、靖国神社参拝の問題についてもわたしは無知だったのだけれど(先日、昭和天皇がA級戦犯合祀に不快感をもっていたというメモが見つかった)あれは諸外国から見ると、たとえばドイツの首相がヒトラーを参拝しているようなものなのだという。それはまずいのでは…と思った矢先、以下のニュースを知った。
→(「安倍官房長官は今年4月に靖国参拝…総裁選の争点にも」読売新聞)

「日本のナショナリズムはおかしい」と著者はいう。「中国や韓国の抗議に屈するな」といって靖国神社を参拝したり、歴史教科書を書き直して、アジアに「侵略」なんかしていないと言い張ったり、「第九条はアメリカの押し付けだから自主憲法をつくろう」と第九条を改正して「自衛軍」を海外派遣できるようにしようとしたり…

しかしそんなことをすれば、アジア諸国との関係はますます冷えこむ。はたから見れば、自分より強い相手(アメリカ)には文句がいえないから、弱そうな相手(アジア)に八つ当たりしているようなものだから、それも当然だ。そうなれば、冷え込んだアジア諸国とのあいだを取りもってもらうために、日本はますますアメリカに頼るしかない。
それでアメリカに頼って借りをつくれば、またアメリカからいろいろなことを要求される。そうすると日本側に不満がたまり、また靖国参拝や歴史問題でアジアに八つ当たりして…


なんという負のスパイラルだろう。でもアメリカの言うがままに米軍の駐留経費の七割を「思いやり予算」で負担しているというこの体たらくでは(アメリカの軍隊はそのおかげで本国にいるより日本に駐留していたほうが安上がりなので、在日米軍は冷戦後の今も数が減らないのだそうだ)アジア諸国から白い目で見られても仕方がない。

もちろん本書の主張が全面的に正しいかどうかとなると、勉強不足の自分には何ともいえない。「歴史とは起こった出来事ではない。歴史とは歴史家がわれわれに語る話にすぎない」という言葉もある。語り手が変われば同じ出来事も変わる。

が、読了して、日本ってけっこうたいしたことない国なのかも…と思ってしまった。たしかに経済発展はした、が、それはアメリカの尻馬に乗っての結果だったのだ。『反社会学講座』にも、「高度成長はたまたまラッキーだっただけ」という記述があった。もしかして日本って、要領いいだけが取り柄の狡い国なのでは…と少し恥ずかしくなってしまった。

わたしは悲観的な人間なので、いつかこんないい加減な政治をしてきたツケを払わされる日が来る気がしてならない。それも、そう遠くないうちに。すでにこの国の借金はとんでもないことになっているわけだし。それなのに妙にこの国全体が浮かれているというか、ふわふわしていないか。

太宰治の『右大臣実朝』に次のような一節があったのを思い出す。

アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ


とても易しい文章で、とても刺激的なことを書いている。わたしは新聞の新刊広告の「朝まで生テレビでもとり上げられました」というのを読んで興味をもったのだが、ラッキーな出会いだった。
(理論社 ヤングアダルト新書)

4652078145日本という国
小熊 英二
理論社 2006-04

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