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zoom RSS 『明日なき身』 岡田睦

<<   作成日時 : 2007/03/20 18:48   >>

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南方郵便機」さんのところで知った本。
著者の岡田睦(おかだ ぼく)さんは1932年生まれですから今年で75歳。このたび初めて知りました。私小説作家のようです。
「私小説」は「わたくししょうせつ」と読むのであって、「ししょうせつ」という呼称は蔑称だ、と車谷長吉さんがどこかで書いていました。岡田さんと車谷さんは同じ私小説作家ですが、車谷さんが濃い自分のキャラクターをネタにしたどぎつい作風なのに対して、岡田さんは逆に飄々としていて、いい意味で軽い作風です。軽い作風で重い内容を扱っているところが、わたしの好きな耕治人さんと少しだけ似ている…かな?

「ムスカリ」「ぼくの日常」「明日なき身」「火」の四編を収録。
著者自身と思われる老人<ぼく>の踏んだり蹴ったりな日常が淡々と書かれる。その「踏んだり蹴ったり」のうちには<ぼく>の失態から生じた問題も多々あるのだけれど、この失態がなぜか不幸な結果を生んでしまう、ある意味哀しいお話でもある。

三人目の妻と別れたために彼女名義になっている家を追い出され、一人暮らしを始め、生活保護(セイホ)に頼らざるを得ない<ぼく>の毎日はかなりハード。
毎月、五日が“セイホ”の支給日。二、三日前になると、きまって金がなくなる。コインだけになり、セブン−イレブンのむすび、最低一個百円のを、一日ひとつ喰うことになる。それも買えなくなって、何も喰わずひたすら五日を待つときもある。


いつも行くコンビニの店員に嫌われていると思い込み、詰め寄ったあげくにすったもんだするエピソードなどは、はっきりいって、かなりイタい。イタすぎる。この<ぼく>、年の暮れに風邪をひいてしまい、鼻水が止まらず、汚したティッシュが部屋中に溢れたため、段ボール箱に詰めて燃やせばゴミを処分した上に暖もとれて一石二鳥とばかりに、アパートの部屋の中で(!!)火を点けてしまう。その火が燃え移って部屋は火事になり、<ぼく>は施設へと送られる。
ネタのつもりですか、と問いつめたい。それにしたってやりすぎでしょう、と諫めたい。

老人ではあるけれど、さすがは作家。ただのお爺ちゃんではない。こんな一節を書いてしまうのだから。
アミーゴ・今川。無沙汰をしたが、ようやく拙簡を綴る時間をGet。いまは、大人も子供も忙しい。ヒマは待っていても、やって来ない。自分で創るものになった。

ア、アミーゴって……。
クールだなあ、岡田睦。

こういう老人がもし身内にいたらと思うとぞっとするが、小説で読むぶんには面白い。思い切り「下流」なのに微塵も悲壮感がないどころか、むしろそんなもの屁とも思っていない作家の強さに痺れる。わたしを含めた若者、また中高年のほうがずっとこせこせしていて惨めにも見えてくるのは不思議だ。だからといって、ではこういうふうに暮らしたいか、と訊かれたら、即「イヤです」と答えるだろう、もちろん。こんな生き方、凡人にはとうてい真似できませぬ。
(講談社)

4062136422明日なき身
岡田 睦
講談社 2006-12-11

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