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zoom RSS 『カラマーゾフの兄弟 5』 ドストエフスキー

<<   作成日時 : 2007/07/20 00:13   >>

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そして、「第一の小説」は終りを迎える。多くの謎を残したままで。
本書には『カラマーゾフの兄弟』エピローグと、訳者によるドストエフスキーの伝記、本編の解題を収録。

ミーチャの裁判後、登場人物たちのその後が語られる。ミーチャの脱走計画が立てられ、グルーシェニカは彼についていく気でいる。イワンは死の床にあり、カテリーナは彼の看病をしている。イリューシャは死んでしまった。アリョーシャは子どもたちと一緒にイリューシャの家を訪れ、亡くなった子どもの葬儀に立ち会う。埋葬が済んだあと、アリョーシャは12人の子どもたちの前で別れの挨拶をする…。

アリョーシャは言う。
「何かよい思い出、とくに子ども時代の、両親といっしょに暮らした時代の思い出ほど、その後の一生にとって大切で、健全で、有益なものはないのです。きみたちは、きみたちの教育についていろんな話を聞かされているはずですけど、子どものときから大事にしてきたすばらしい神聖な思い出、もしかするとそれこそが、いちばんよい教育なのかもしれません。
自分たちが生きていくなかで、そうした思い出をたくさんあつめれば、人は一生、救われるのです。もしも、自分たちの心に、たとえひとつでもよい思い出が残っていれば、いつかはそれがぼくらを救ってくれるのです」

このあと、ぼくたちを結びつけてくれたのはイリューシャなのだから、彼のことを決して忘れずにいましょう、と続く。
「永遠にあの子のことを忘れないようにしましょう! あの子の、消えることのないすばらしい記憶が、これからのち、永遠にぼくらの心のなかに生き続けますように!」


石のそばでアリョーシャが子どもたちに語る「思い出賛歌」は美しい。亀山郁夫さんは「ミーチャの地底賛歌こそ宗教とならねばならない」と「訳者あとがき」に書いているが、このアリョーシャの賛歌も同じくらい素晴らしくはないか。今日を生きた思い出が、未来の自分を救うかもしれない。本当にそう思えたら、今というかけがえのない瞬間をかぎりなく愛おしく思えるし、「現在の生」に燃焼することこそ「カラマーゾフ的」であるのだから、アリョーシャがこう語るのは当然なのだ。彼だってやっぱりカラマーゾフなのだから。
「そう、かわいい子どもたち、かわいい友人たち、どうか人生を恐れないで! なにか良いことや、正しいことをしたとき、人生ってほんとうにすばらしいって、思えるんです!」


新訳『カラマーゾフ』は売れているようだ。いつか、ほんとうに、亀山さんが夢見る、「だれかが、どの時間帯にあっても、つねに切れ目なく、お酒のつまみにでもいい、夢中になって『カラマーゾフの兄弟』を話し合うような時代」が訪れてくれたら、飲み屋で友人たちと『カラマーゾフ』について語っているうちに、知らない人たちがどんどん話に加わってくるようなことが現実に起こったら、そうなったら、ああ、どんなに愉快だろうか。
そのときはジョッキを掲げて大声で喚くつもりだ。
「カラマーゾフ万歳!」と。


カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫 Aト 1-5)
カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫 Aト 1-5)ドストエフスキー 亀山 郁夫

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●記事を書くにあたってお世話になった本

中村健之介 『ドストエフスキー人物事典』(朝日選書)
中村健之介 『ドストエフスキーのおもしろさ』(岩波ジュニア新書)
小林秀雄 『ドストエフスキイの生活』(新潮文庫)
V・ネチャーエワ編 『ドストエフスキー 写真と記録』(論創社)
アンリ・トロワイヤ 『ドストエフスキー伝』(中公文庫)
ウラジーミル・ナボコフ 『ロシア文学講義』(阪急コミュニケーションズ)
亀山郁夫による各巻の「読書ガイド」
新共同訳 聖書

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