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zoom RSS 『セックスエリート』 酒井あゆみ

<<   作成日時 : 2007/09/19 03:19   >>

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本書は五人のナンバーワン風俗嬢たちへのインタビューをまとめたノンフイクション。人気(=売上げ)ナンバーワン風俗嬢になるにはサービスを向上させ客からの指名率を上げねばならない。必ずしも容姿の美しい女性がなれるとは限らないらしい。では、ただの風俗嬢とナンバーワン風俗嬢とはどこが違うのか。もと風俗嬢の著者はその謎の答えを求めて取材を続ける。それは、かつて指名がとれず苦しんだ過去、指名が取れるようになったあとでは勘違いをして傲慢になった過去をもつ彼女の「自分探しの旅」にもなった。

いまや風俗業界は決して特殊な世界ではない。本書のある女性は言う。「昔は、この仕事に入る時って一大決心があったと思うんですよ。今はそんな子一人もいないですよね。私がもし、場末のスナックのママをしてても雇わないような子なんかでも、バリバリの風俗経験者ですって。十八歳くらいの子でも平気で『私は、どこそこのヘルスと、どこそこのヘルスと、どこのデリヘルにいました』って、ざーっと名前が挙がってくるんですよ」。実際、本書に登場する風俗嬢の何人かはプロというよりいわゆる素人的で、そのプロ意識の欠如が著者にはもどかしく思えるようだ。

とはいえ彼女たちにもそれぞれの信念はあるわけで、だからこそ店の看板をしょって立つナンバーワンになれたのだ。ある女性はこう述べる。
「その時間だけはお客さんと本気で恋愛しますよ。遊ぶルールがあるにしろ、本気でしてあげるし、本気で感じたりもするし」。
現在の業界は供給過多だそうで、指名がとれない女の子は店側がどんどんクビにしていくのだという。「まさに女は消耗品の時代」と著者は書いている。その厳しい世界でトップに立っているのだから彼女たちの話は興味深い。が、話を聞くと彼女たちは意外なほど特別なことをしていない。べつの女性はこう述べる。
「癒してあげようとは、思ってないですね。その人が何を求めているか、私が気にしているのはそれだけですよ。普通、そんなに自分のことを気にしてくれる人っていないじゃないですか」。
ある意味それこそサービス業の極意なのかもしれない。
また、さらにべつの女性はこう述べる。
「どうやったらお客様に気に入られるかなって気持を外に出してしまったら、絶対にお客様はその時点で気付くんですよ。そんな媚びてる自分を知られてしまったら指名には繋がりませんよね。だから、擬似恋愛かもしれないけど、与えられた二時間の間は、本気でその男を好きにならなければいけないと思うんです」。
いまや風俗の世界は性的な快楽はもちろんのこと、心の快楽まで求められる産業になりつつある。

上のようなインタビューが続いたあと、最後に、超高級ソープランド(一回の利用に十万円かかる!)で現在は講習係をしている42歳のもとナンバーワン風俗嬢へのインタビューがある。この女性への取材が本書でもっとも印象深い。彼女の語る話は風俗業界のみならず、あらゆる職種に通じる哲学があると思う。ちょっと多くなるが、彼女の言葉のなかからいくつかを引用する(太字は引用者)。

「私が現役の時に、何でも私の真似をする子がいたの。でも、その子がいくら同じことをしても全然指名が取れなかったのよ。私がバラの花をいっぱい買ってきたら、その子が『私のも一緒に買ってきてください。お金払いますから』って言うのね。買ってきてあげると、その子はそのお花を花瓶に生けて枯らすだけだったのよ。私は『バラの花びらを全部ちぎって、バラ風呂にしよう』でしょ。でも、彼女には同じものがあっても使い道がわかんないんですよ。自分の考えたことじゃないから。真似しても、同じことをしても、自分の頭で考えなければ、自分の仕事にはならないんですよ


「今の子ってすごく臆病な子が多いんです。失敗を恐れてる子が多いっていうかね。クレームとかにすごく敏感で、何か言われたら死にたくなるくらいに落ち込む。でも、クレームを言ってくれるお客さんは、素直な親切な人だよって教えてあげるんです。考え方ひとつ変えれば、クレームがないと、進歩もなければ修正もできへんでしょ


「ある女の子が言ったんです。『お客さんのこと、胸がキュンとなるほど好きって思い込んでキスをするんですよ』って。その子は、ある時からすごい勢いで指名が上がってきましたね。自分のほうから飛び込んで行っているんですよね。それって、本当は恐ろしいことじゃないですか。お客さんに身体を委ねることって――。でも、自分から飛び込まなければ、相手は心を開いてくれないんです
お金をもらう以上、やっぱりプロに徹しなきゃいけないわけでしょ。だったら、彼氏に心を許してる以上に、お客様に心を許さなければ支持なんかしてもらえないですよ。心のどこかで彼氏が一番だったら、その気持は家に置いて出てこないと」


「中途半端な気持でなんか、やってたって何もならない。風俗嬢してるんだったら月収二百万以下だったらやめとけ、って思います。リスクの大きい仕事だし、安い金だったら身体張ってる値打ちないし」


「風俗は踏み台ですよ。よく言うんです。『自分の人生の中の汚点になるような働き方はしなさんな』って。風俗で働いて、これだけ厳しい思いして、辛い思いもして、痛い思いもして、悲しい思いもして――でも、それを踏み台にして別の場所へのステップにしなさいよって。この仕事、十年も二十年もやるもんじゃない」

業界の苦も楽も知り尽くした人間ならではの発言だと思う。

しかしこの業界、ナンバーワンになれたからといって、決して安泰な地位を手に入れたことにはならない。ある27歳の風俗嬢の言葉が胸に沁みる。
「私は手に職を持ってるわけじゃないし、何のコネもないし、特別な才能も持ってないですから。普通の仕事に就けたとして、せいぜい月に十万ちょっと、いっても二十万ぐらいでしょう。それが私の限界だから。でも、今はお金をもらった喜びは少ないです。私の中では『あと何ヶ月続けられるんだろう』っていうストレスのほうが大きくて」。


434440890Xセックスエリート―年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして (幻冬舎アウトロー文庫)
酒井 あゆみ
幻冬舎 2006-12

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サービス業という点では同じといえるだろう以下の本も関連書籍として挙げておこうか。著者はアルバイトののち正社員に登用され、300名のスタッフのなかで売り上げ一位になった新幹線パーサー。自分よりずっと若い女性(23歳!)の仕事に対するひたむきな姿勢に刺激されるとともに、ふだん知る機会のない職業の日常やこぼれ話が知られて楽しい一冊。

4840117829新幹線ガール
徳渕 真利子
メディアファクトリー 2007-03

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