epi の十年千冊。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『ルポ 最底辺』 生田武志

<<   作成日時 : 2007/11/06 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 0

「究極の貧困」である野宿者たちの生活の実態を知る。駅周辺や公園で見かけるホームレスを見る目が変わりそうだ。

著者は釜ヶ崎で日雇い労働・野宿者支援活動に携わり、自らも日雇い労働者として働いている。現場の生の声は非常にリアルかつ意外性のあるもの。

ワーキングプアやネットカフェ難民などが社会問題になっている。本書を読むとバブル崩壊直後の釜ヶ崎はすでに現代の縮図だったのだと分かる。釜ヶ崎の日雇い労働者たちは朝になると(その日かぎりの)仕事を求めて「あいりん総合センター(寄せ場)」にやって来て、手配師と呼ばれる人から仕事をもらう。手配師は企業と労働者のあいだに立って求人を行う人で、労働者を紹介することで賃金から一割程度のマージンをとっている。バブル期の釜ヶ崎は好景気の影響で朝何時に行っても手配師たちがいたが、崩壊後にその姿は減り、早朝から寄せ場へ行って並んでも高齢の労働者は月に何度かの仕事しか得られなくなってしまった。当然生活していけず、やむなく路上で寝るようになる。また不安定就労者は正規雇用者のような保険がないため、ケガや病気になると仕事を失ってしまう。彼らもまた路上生活を送らざるをえなくなる。こうして不況とともに野宿者は増え続け、また高齢化が進み、大阪市内だけでも年間路上死者数は数百人にのぼるという。
この日雇い労働は現在の「ワンコール派遣」とそっくり同じだし、ケガや病気をすれば即失業という図式は非正規雇用者すべてにあてはまるだろう。釜ヶ崎はまさに現代を先取りしていたのだ。

意外だったのはこういった日雇い労働者はみんなあまり仕事熱心ではないだろうという自分の思い込みとは裏腹に、非常にプロ意識の高い人たちが多かったという点だ。著者は大学在学中の20歳のころから20年にわたって釜ヶ崎で支援活動のかたわら日雇い労働に従事しているのだがそこで出合った人たちの真面目に一所懸命に働く姿勢には驚かされる(むろん仕事に不熱心な人たちも多かったろうが)。仕事がはじまるまではニコニコ話しかけてくるが、仕事が始まれば口数少なく手を抜かず作業に没頭する労働者たち。彼らはいう、「働いてなんぼのもん」と。日雇い労働はブルーカラーの仕事ばかりだったため「誰にでもできる仕事」と不当に見下されていたようだが、たとえば真冬にホースで水をえんえんまき続けるだとか、アスベスト除去作業だとか、とても「誰にでもできる」とは思えない過酷な労働が多い。

「ホームレスになった」というと「本人の努力が足りない」等の自己責任論が飛び出しそうだが、そもそもいくら努力したところで空きがなければ仕事にはつけないのだ。著者はこのことを椅子取りゲームにたとえて説明している。失業による路上生活から抜け出すためには本人の努力以上に「仕事がない」という構造的な問題を解決することこそ喫緊の課題なのだ。


それにしてもこの新書には考えさせられる。
たとえば野宿者を公園のテントから強制的にアパートに入居させても孤立させるだけだという指摘がある。公園でのテント生活は同じ野宿者たちが集まっているためコミュニティとして機能している(たとえば誰かが酒を飲みすぎていると止める、といったような)。また、十時間働いて1000円にも満たないとはいえ段ボール拾いのような仕事がある。そんな人が生活保護の申請が受理され一人ぼっちでアパートへ放り込まれた途端、することも話すこともなく孤独に苦しむようになる。そのくらいならテント生活のほうがいいと主張する野宿者の意見は人情として理解できる。野宿者には犬や猫を飼っている人たちもいるようで、これも寂しさを紛らす効果があるのだろう。わずかな賃金のなかから動物の餌代も払っている彼らを想像したらたまらなくなった。

釜ヶ崎の日雇い労働者の問題は、この先のフリーターの「高齢化」によって再現されると思われる。しかも「ワンコール派遣」のある現在、問題は釜ヶ崎といった特定の地域ではなく日本全国で発生するだろう。著者の言葉どおり日本全国が「釜ヶ崎化」するのだ。
80年代末、釜ヶ崎の活動家の間で、「寄せ場」の日本全国への拡大、つまり全国の釜ヶ崎化という話を何度かしていたことを思い出す。当時、バブル経済の登り坂の中、建設・土木業界は絶好調で、そのあおりで釜ヶ崎をはじめとする全国の寄せ場はその規模を拡大し続けていたからだ。そして今日、ある意味でその予想は現実となった。山谷、寿のような地域としての「寄せ場」が崩壊した代わりに、アルバイト情報誌と携帯電話を軸にした新たな形の「寄せ場」が全国で形成されたからだ。つまり、従来の「寄せ場」の機能低下(そして野宿者の激増)と同時進行するように、あらゆる職域、地域にわたる不安定雇用が拡大し、日本全国が「寄せ場」化したのである。


事態は深刻だ。そして他人事ではない。



4480063773ルポ最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書 673)
生田 武志
筑摩書房 2007-08

by G-Tools



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ワーキングプア
ワーキングプアって言葉知ってますか? 働く貧困層って言って、働いても働いても暮らし向きが楽にならないことを言うのですが、だから、転職を考えるんですよね ...続きを見る
転職のススメ
2007/11/09 21:49

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『ルポ 最底辺』 生田武志 epi の十年千冊。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる