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zoom RSS 『勝手に生きろ!』 チャールズ・ブコウスキー

<<   作成日時 : 2007/12/27 00:00   >>

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第二次世界大戦のさなか、1940年代のアメリカ。移民の子であるヘンリー・チナスキーの職業遍歴を通じて当時のアメリカのブルーカラーの労働現場の現実と生きることの悲哀を、ユーモラスにまたぶっきらぼうに、ありきたりの言葉で描く。

どこまで反映されているかはともかく、小説の主人公、作家志望の若者チナスキーはブコウスキーの分身であるようだ。酒浸りで競馬狂、女とのセックスに明け暮れ、何の仕事に就いても長続きしない。いったいチナスキーは何度転職をしているだろう。ビスケット製造工場、婦人服店、自転車製造会社、洋品店、蛍光灯の取付器具会社、イエロー・キャブ、画材屋などなど…。はじめから長く働く意志はないから、何日か勤めると昼食をバーでとるようになり、そこで酒を飲み、滅茶苦茶をやって解雇される。大まかにいえば本書のストーリーはその繰り返し。しかしそんなダメ男なのに嫌悪感を抱くどころかむしろ共感を覚えるのは、彼が己を偽ることなく自己に誠実に生きているからだろう。すがすがしさを覚えこそすれ不快感はない。そして、何の仕事も数週間で辞めてしまうチナスキーが書くことだけは決してやめない、という点には注意して読みたい。

ユーモアに溢れているにも関わらず、ブコウスキーを読んでただ愉快な気分に浸るということはあまりない。彼の「アンチ文学としての文学」にはどれほどの馬鹿騒ぎや陽気さのうちにもつねに苦味がある。晩年の『死をポケットに入れて』や『パルプ』にとくに顕著な死の影や社会への絶望。そういったネガティヴな感情が行くところまで行った末の、いわば毒を含むユーモアだからだろうか。

それと、忘れてはいけない。孤独もブコウスキー文学の鍵言葉のひとつだ。
おれはベッドに入ってワインを開け、硬く枕を折り畳むと背中に当てて、深く息を吸い込んだ。暗闇のなか、窓の外を見た。一人になったのは五日ぶりだった。おれには孤独が必要だった。他のやつに食べ物や水が必要なように、一人になれないと、おれは日ごとに弱っていく。別に孤独を自慢してるわけじゃない。孤独に頼っているだけだ。


また、以下のような文章に痺れるかたも多いのではないか。
ロサンゼルスに戻ると、フーヴァー通りからちょっと入ったところに安ホテルを見つけた。ベッドのなかで飲んでいた。相当長いあいだ、三日も四日も飲み続けた。求人広告を読む気にもなれなかった。机の向こうの男に、仕事が欲しいんです。この仕事はぼくが適任です、なんて言うところを思っただけでぞっとする。要するに、おれは人生にうんざりしていた。ただ食べたり、寝たり、服を買うためにしなくちゃならないことそのものにだ。だからおれは、ベッドのなかで飲んでいた。飲んだところで世界がなくなるわけじゃない。でも、世界のほうもこっちの首を絞めたりはしない。


格好いいねえ、ブコウスキーは。格好悪いのに、格好いい。



4309462928勝手に生きろ! (河出文庫 フ 3-5)
チャールズ・ブコウスキー 都甲 幸治
河出書房新社 2007-07

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
epiさん、久しぶりにコメント入れます。いつも興味深く読ませていただいています。いつも私の気持ちにぴったりの本を紹介してくださるので、今まで知らなかった作家を知ったり、食わず嫌いでいた作家に興味を持ったりして、読みたい本がだんだん増えてきました。有難う(^^)。epiさんお勧めの本を、そのうちじっくり読むことができるといいと思っています。
magnoria
URL
2007/12/28 00:02
ブコウスキーはくそったれ少年時代が最高だと思います
松本
2007/12/28 03:24
>magnoriaさん

こんばんは。コメントありがとうございます。
食わず嫌い、誰にでもありますよね。自分にもあります。嫌いなものを無理して読む必要はないと思いますが、もし当ブログが何か興味を引く助けになったとしたら、こんなに嬉しいことはありません^^

当ブログは自閉的な読書記録なので誰に対してもお勧めなんてとてもできませんし、人に何かを勧めるということもたえてしていません。人間はみな個人で異なるもので、だからこそ共通する要素を発見したとき喜びもあるのだと思っています。それでもこうして公開しているということは、やはり(不特定多数の)人にお勧めしているということになるのでしょうか。少し考えてみたいところであります。
epi
2007/12/30 02:07
>松本さん

『くそったれ! 少年時代』は中川五郎さんの翻訳ですね。ブコウスキーはひととおり読みたいので、これもいずれ。
コメントありがとうございます。
epi
2007/12/30 02:09

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