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zoom RSS 『海に住む少女』 シュペルヴィエル

<<   作成日時 : 2008/09/06 00:00   >>

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静寂と孤独と死の筆で描かれた水彩画のような短篇集。

収められた10篇のすべてが安易なジャンル分けを拒む不思議な精彩を放っている。
海に浮かんでは消える、誰にも見えない町に一人ぼっちで暮らす少女の物語「海に住む少女」。イエス生誕に立会い、ヨセフ、マリアとともに過ごす牛の物語「飼葉桶を囲む牛とロバ」。天国でも地獄でもない曖昧な領域である死者の世界にたどり着く、自殺した女の物語「セーヌ河の名なし娘」。これらのほかの作品にも共通していえるのは人間存在をかなしみ、さびしみの側面から捉える透徹した視点と、生死を対立ではなく極めて曖昧に捉える独特の死生観だ。

シュペルヴィエルの両親はフランス人。彼は1884年にウルグアイで生まれ、生後まもなくフランスに帰るが直後に両親を亡くす。二年間をフランスはバスク地方の祖母のもとで過ごしたあと、ウルグアイで銀行を経営していた伯父夫婦に引き取られ、そこで実子のように大切に育てられる。10歳になると伯父夫婦とともに再びフランスへ。そこで学業を終え、フランス語による執筆を選択する。
「解説」で訳者が指摘しているとおり、彼の作品に共通する「孤独」や「死」の主題ならびに世界を「善―悪」や「生―死」などの二項対立ではなく融和した混沌の状態として捉える複眼的な視点は、その生い立ちが関係しているのだろう。

シュペルヴィエルの本業は詩であり、本書に収録された10篇はどれもストーリーの展開を追うのではなくて作品の雰囲気を味わうものとなっている。収録作品は上記の3作のほかに「空のふたり」「ラニ」「バイオリンの声の少女」「競馬の続き」「足跡と沼」「ノアの箱舟」「牛乳のお椀」。

シュペルヴィエルの短編のもつ透き通った孤独さ(孤独という言葉は少し強くて、もっとやさしく一人ぼっちの感覚とでも呼びたい)は小さな花を思わせる。古戦場に咲いた、名も知らぬ可憐な一輪の花を。


4334751113海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
永田 千奈
光文社 2006-10-12

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