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zoom RSS 『愛がなくても喰ってゆけます。』 よしながふみ

<<   作成日時 : 2008/11/23 00:00   >>

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おいしいお店での食事をめぐる短編集。主人公の漫画家Yなが氏が知人、友人と都内の飲食店でご馳走を満喫する、それだけのお話。各話は非常に短いがどれにも旨いものを食うことの喜びが溢れていて、読んでいてうれしくなるとともに無性に外食がしたくなる。

イタリアン、韓国料理、寿司、中華、フレンチ、ケーキ・バイキング、鰻、ベトナム料理などなど、さまざまな料理を実においしそうに食べる登場人物たちを見ていると腹が減っていけない。グルメ漫画にありがちな味の大仰な比喩はなくて、普通の人が普通にいいそうなことを台詞にしているのもいい。この漫画に出てくるお店はすべて実在しており、簡単なマップと作者のコメント(味や量や予算など)が付いている。これが嬉しい。行きたくなる。

食いしん坊な人間なので、旅行や出張に行くときには必ず事前にネットや雑誌で評判のよい店を探してから行く。どうせ食うのなら旨いものを食うに越したことはない。評判どおりのいい店だったときもあれば、首を傾げざるを得ない店のときもある。管理人にとってよい店とは、味だけではなくて店員の接客態度や、店の内装や、かかっている音楽がどれも居心地のいいものであること。初めて入って、明らかに店側が対象としている客層とズレているなと思うときもあるが、それも含めて「初めての店に食事に行く」ことは楽しい。ちょっとした旅のような気にもなる。

食事を主題にしたいい漫画に『孤独のグルメ』があって、これは中年男が一人でとる食事の楽しさをしみじみ感じさせる漫画だった。対するにこの『愛がなくても喰ってゆけます』は常に誰かと一緒に食事をとっている。外食でも、家での食事でも、「何を食べるか」も大切ではあるが「誰と食べるか」もまた居心地のよさに大きく関係するだろう。気が置けない相手とする食事がもっとも寛げる。テンポの合わない相手との食事は気疲れするだけで、それならば一人でとるほうがよほど心地よい。

ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』の脇役に、オールド・ミスの家庭教師が出てくる。彼女は恋愛や結婚にもはや望みを抱いてはおらず、人生の楽しみといったら食事くらいしかない。しかし食事への興味があるということは、少なくとも日に三度は楽しみの時間がもてるということになるわけで(おやつや酒を含めたらもっとか)考えようによってはこれはこれでなかなか贅沢な人生ではないか。これは偏見であるが、食事にまったく興味がなく、カップ麺やコンビニ弁当で十分、と言っている人間より、決して美食家というほどではなくても食べることに関心がある人間のほうが、人として面白味のある場合が多いように思う。いや、これはサンプルケースがあまりに少ないし、同類同士ウマが合うというだけの話かもしれないが。

芥川の「侏儒の言葉」に「天国の民は何よりも先に胃袋や生殖器を持っていない筈である」とあるが、俗人にとってはそんなところは天国とはいいがたいし、生殖器はともかく胃袋はあってほしいから現世こそ天国だ。

この漫画を読んだら、ちょっとお洒落してフランス料理を食いに行きたくなった。


愛がなくても喰ってゆけます。
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