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zoom RSS 『小悪魔』 フョードル・ソログープ

<<   作成日時 : 2008/12/05 00:00   >>

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19世紀末から20世紀初頭のロシア文学の一潮流だった(前期)象徴派を代表する詩人ソログープによる小説。

舞台はロシアの地方都市。主人公の中学教師ペレドーノフは出世を夢見、公爵夫人から結婚したら視学官(教育の指導監督)のポストを与えてやると口約束されている(らしい)女、ワルワーラと暮らしている。ペレドーノフは年増の彼女を愛しておらず、むしろ疎んじているくらいだが、出世欲には勝てない。
ペレドーノフは異常なまでの妄想癖をもっており、他人が自分を妬み、出世の邪魔をするのではないかとそればかり考えて暮らしている。その恐怖は憎悪に転換され、彼はこの世のすべてを憎み、心安らぐことがない。
将来有望なペレドーノフと早く結婚したいワルワーラは、彼女と結婚したらポストを与えるという内容の公爵夫人からの手紙を偽造し、投函し、これを受け取ったペレドーノフは真に受け、彼女と結婚する。彼が騙されたのに気づいたときはすでに遅く、また噂好きな町の住人たちは彼の愚かさを嘲る。
このころからペレドーノフの不安定な精神状態はますます悪化し、もはや現実と非現実の区別がつかなくなり、幻覚に苦しみ、最後には殺人を犯して破滅することになる。

外貌はリアリズム小説だが内容は象徴的で、たとえばペレドーノフは憂さ晴らしとしてよく生徒の家を訪問しては、ありもしない素行の悪さを両親に吹聴するのだが、これなどは当時の社会に横行していた密告を暗示しているのだろうし、ペレドーノフの見る幻覚の場面の描写は幻想小説じみてもいる。頻出する「ニェダトィコムカ」はソログープの出身であるノヴゴロド地方の方言で「怒りっぽい人」を意味する語らしいが、これがまるで悪魔か鬼のようにペレドーノフの眼前に現れて彼を苦しめる。

しかしペレドーノフは終始嫌悪すべき低俗な人間として描かれており、彼に同情の余地はない。出世欲と妄想に憑かれた彼が犯す殺人は衝動的なものに過ぎず、たとえばドストエフスキーのラスコーリニコフのような思想的な面は微塵もない。社会の抑圧や自意識の過剰などが生み出す狂気の物語は、時代を経てやがて多く書かれるようになるだろう。


4286006395小悪魔
フョードル・ソログープ
文芸社 2005-11

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