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zoom RSS 『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治(作) 田原田鶴子(絵)

<<   作成日時 : 2009/02/02 00:00   >>

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いつになるか、十年ともに暮らした犬が死んだ夜にも『銀河鉄道の夜』を読んでいた。

宮沢賢治のよい読者ではない。それでもこの童話は幼いころから幾度か読む機会があった。透明な哀しみをたたえた美しいお話で、死と祈りのイメージが静かな水のように、ある。こういうものを名作と呼ぶのだろう。

あらすじをいまさら紹介する必要もないとは思うが。
母親と姉(この姉は登場しない)と二人で暮らしているジョバンニは、星祭りの夜に一人で丘に登って星空を眺めていた。するといつしか自分が銀河鉄道の車内にいるのに気づく。彼のそばには友人カムパネルラがいた。二人は窓外に広がる幻想的な光景を目撃しつつ、「本当のさいわい」を求める旅に出る。しかしそれらはすべてジョバンニが丘の上で見ていた夢で、家路の途中で川辺に寄ると、カムパネルラが川に落ちたという。救助隊が出ているが彼は見つからず、ジョバンニはふたたび家路につく。

いつも思っている。この世界の悲しみをわずかでも背負いたい、この世界の悲しみの総量をわずかでも軽くしたい、と。みんなのための「本当のさいわい」を求めるジョバンニは、あるいはわたしではなかったろうか。

印象的な箇所がある。途中から乗車してきた少女は「神さま」のいる「天上」で降車しようとするのだが、そこでジョバンニと彼女が交わす会話だ。
「僕たちと一緒に乗って行こう。僕たちどこまでだって行ける切符持ってるんだ。」
「だけどあたしたちもうこゝで降りなきゃいけないのよ。こゝ天上へ行くとこなんだから。」女の子がさびしそうに云いました。
「天上へなんか行かなくたっていゝじゃないか。ぼくたちこゝで天上よりももっといゝとこをこさえなきゃいけないって僕の先生が云ったよ。」
「だっておっ母さんも行ってらっしゃるし、それに神さまが仰っしゃるんだわ。」
「そんな神さまうその神さまだい。」
「あなたの神さまうその神さまよ。」


鳥肌が立つほどおそろしいやりとりをしているのだがそれは措くとして。
故郷岩手で農民の生活向上のため身を粉にして働いた著者がジョバンニに「ぼくたちこゝで天上よりももっといゝとこをこさえなきゃいけない」と先生にいわれた、と書いているのが興味深い。この先生というのは、冒頭で登場する優しそうな理科の先生だろうか、それとも別の誰かか。あるいは著者自身であるかもしれない。
仏教徒であった著者が本作でキリスト教的なモチーフを多用しているのも不思議な気がする。

田原田鶴子氏の絵は著者の叙述を厳密に再現した見事なもの。童話はときにあまりに現実離れした描写をするためイメージの像を結ぶのに苦労することがあるが、そのイメージの一助となるすぐれた仕事。巻末には丁寧な用語解説がついており、本としてのクオリティの高さに感嘆する。子どものころから、絵や写真のついている本がすきだった。


403972030X銀河鉄道の夜―宮沢賢治童話傑作選 (宮沢賢治童話傑作選)
宮沢 賢治
偕成社 2000-11

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