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zoom RSS 『フランケンシュタイン』 メアリ・シェリー

<<   作成日時 : 2009/03/29 00:00   >>

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恐ろしく、いずれ哀切な物語。

知識欲に憑かれた科学者フランケンシュタインは、冬のあるわびしい夜、ひとつの生命を創造するのに成功する。人間の死体の一部ずつをつなぎ合わせ、電気によって命を得たそれはしかし、彼の想像を絶するほどにおぞましい、人間とは似ても似つかぬ怪物だった。自らが生み出したものへの恐怖と罪悪感に苛まれるフランケンシュタイン。優しさと細やかな感受性を与えられていながら、醜い容貌のために愛を得られない孤独な怪物。小説は、この二人が辿る運命を、若い海洋冒険家のウォルトンが、北極で漂流していたフランケンシュタインから聞かされる構造になっている。この二人のどちらもが、悲しい生を生きねばならなかった。

1831年に発表された本作は、あまりに有名な怪奇小説だ。何度も映画にもなっている。しかし原作を実際に読んだ人はそれほど多くないのではないか(巻末の解説に「フランケンシュタインの名を知らぬ者はないが、原作を読む者は欧米でもまれなのである」とある)。管理人もその一人で、マッド・サイエンティストによって怪物的な容貌の人間が創造される、というイメージでしかこの小説を捉えていなかった。実際に読んでみれば、怪奇小説であるし、殺人事件の起るミステリでもあるが、何よりも愛を求めて得られない怪物の、孤独な魂の叫びが胸に突き刺さる。川に落ちて死にかけた少女を救ったとき、人間は感謝するどころか、いきなり彼に向けて発砲する。彼の優しさは人間たちには受け入れられない。なぜ自分を生んだのかという怪物の必死の問いに、親であるフランケンシュタインは答えることができない。

この愛が憎悪へと反転するのは自然だ。怪物はやがて人間に対して怒りを覚え、その矛先は自らの主人であると同時に親でもあるフランケンシュタインに向けられる。フランケンシュタインは周囲の大切な人々を、怪物の手によって奪われていく。後半はこの二人――ドッペルゲンガーのようなこの二人の追いかけっこになる。愛する者を守ろうとするフランケンシュタインと、それを奪おうとする怪物と。この追いかけっこは、ウォルトンの目の前で終焉を迎えることになるだろう。


人類による生命創造は、人が神の領域を侵犯することを意味する。シェリーによって本書が書かれてからクローン問題が身近なものとなった現代まで180年の開きがある。この間に多くの、いわば「『フランケンシュタイン』の子ども」が生まれた。チャペックやアシモフのロボットがそうだし、リラダンやディックのアンドロイドがそうだし、『ターミネーター』もその延長線上にあるだろう。未来において機械が知能を得、やがて感情までも得たとき、彼らの倫理が人間を駆逐する選択をしたとしてもおかしくはない(映画『2001年宇宙の旅』の怖さは、並のホラー映画の比ではない)。こうしたテーマは今やありきたりのものとなってしまっているけれども、その元祖が本書だった。「フランケンシュタイン後」を知っている読み手であっても、本書を読むと、そのテーマ性と存在の耐えられない孤独さに胸を打たれるのではないか。やはり何でも読んでみるものだ。


4488532012フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))
森下 弓子
東京創元社 1984-01

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このリラダンは人造生命を社会レベルではなく個人レベルで考えたい女嫌いの読者にたぶんうってつけ。『残酷物語』が古典新訳文庫で出ないかなあとずっと期待しているのだけれど。
4488070043未来のイヴ (創元ライブラリ)
斎藤 磯雄
東京創元社 1996-05

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このディックはいわずと知れた映画『ブレードランナー』の原作。
4150102295アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) (ハヤカワ文庫 SF (229))
カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン) 浅倉久志
早川書房 1977-03-01

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『フランケンシュタイン』の怪物を精霊として描く『ミツバチのささやき』は叙情的人間のハートをわし掴みにする。
B001FVXU9Qビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール
アナ・トレント, フェルナンド・フェルナン・ゴメス, オメロ・アントヌッティ, オロール・クレマン, ビクトル・エリセ
紀伊國屋書店 2008-12-26

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