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zoom RSS 『ストーカー』 A&B・ストルガツキー

<<   作成日時 : 2009/04/03 00:00   >>

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ストーカーとは密猟者のこと。

かつて地球に来訪した宇宙人の痕跡とされる未知の領域「ゾーン」。ここは地球の物理法則を無視した異常現象が発生する場で、誰もがその実態を把握できずにいる。危険な領域だが、このなかには宇宙人が残していったとされる様々な物体が未だ転がっており、ストーカーたちは命賭けでこれらを手に入れ、運よく生還できれば専門の商人に買い取ってもらう。物体の多くは用途不明なものばかりだが、なかには地球の生活に利用できるものもあった。そしてストーカーたちの噂によると、このゾーンの奥にはどんな望みでも叶えてくれる「黄金の玉」と呼ばれる物体が眠っているという。主人公であるストーカーのシュハルトは、最終的にはこれを目指すことになる。

本書は、レムの『ソラリス』と同様に「未知との遭遇」を主題とした小説だ。ただしこちらには異星人は姿を現さない。地球にはいくつかのゾーンが残されているのだが、これらの地点で異星人たちが何をしたのか、そもそも何の目的で地球を来訪したのか、人類は答えを出すことができずにいる。いや、はたして確たる目的があったのかどうかさえ定かではない。ある物理学者はこの問いにこう答えるだろう。来訪は彼ら異星人たちのピクニックに過ぎなかったのではないか、と。たまたま地球が選ばれ、そこに、ちょうどピクニックに来た客たちが食べ残しやゴミを捨てていくように、ゾーンとそのなかに眠る様々な物体も、深い意図など微塵もなく、ただ遺棄された異星人たちのゴミに過ぎないのではないか、と。そう、本書の原題は「路傍のピクニック」なのだ。

しかし異星人たちの思惑がどうであれ、一攫千金を目当てにストーカーたちはゾーンに繰り返し侵入する。体の一部を失ったり、死ぬ者は絶えないというのに。この舞台設定にはRPG、とくにウィザードリィ的な面白さがある。危険な罠の仕掛けられた迷宮、宝物の回収――。

小説はスリリングな迷宮探索の物語を展開する一方でゾーンの由来をめぐって考察され、そのバランスがよくとれていて単純に楽しく読める。宇宙に知的生命体が存在するとしても、彼らは地球人など虫程度にしか認識していないかもしれない。人類の自意識過剰を改めるかのような実にすがすがしい小説だ。意味深な結末もよい。


4150105049ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)
深見 弾
早川書房 1983-02

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ストルガツキー 路傍のピクニック(ストーカー)
 アルカジイ&ボリス・ストルガツキー(兄弟)はソビエト/ロシアのSF作家。  この「路傍のピクニック」(邦題:ストーカー)はタルコフ&... ...続きを見る
P&M_Blog
2009/04/06 22:03

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私はこれも「ソラリス」も『「未知との遭遇」を主題とした小説』でありながら、そこにとどまらない魅力を感じて、そこが好きなのです。
とくにこの「路上のピクニック」ではレッドはゾーン探索を職業にしているわけでも、ましてや楽しんでいるのでもなく、もっとストレートにブツを運び出し売り捌く事で「ゾーン」に生活の糧を求めていて、その生き様こそがこの小説の魅力だと考えます。
piaa
URL
2009/04/06 22:13
>piaaさん

こんにちは。
『ソラリス』もそうでしたが、宇宙人と意思の疎通が図れると思うのは思い上がりなのでしょうね。本書では地球など「路傍」に過ぎないとされていて、それがなんともいえず心地よかったです。「知性とは何か」という議論が本書のなかでされますが、コミュニケーションのとれない他者と対した際の無力感が全篇に通底していて、立派に文学していました。
epi
2009/04/10 12:35

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