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zoom RSS 『クラッシュ』 J・G・バラード

<<   作成日時 : 2009/04/06 00:00   >>

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テクノロジーに調律された性と死の悪夢的世界。

語り手のバラードは、雨上がりの六月の夕暮れ、車をスリップさせて対向車と正面衝突する。病院から退院後、彼の前に、自動車衝突と性交に憑かれた異常な人物、ヴォーンが現れる。メフィストフェレス的な彼の導きによって、バラードは少しずつ、ヴォーンの倒錯した世界に引きずりこまれていく。ヴォーンは、滅茶苦茶に潰れた自動車のボディと、損傷した血塗れの人体というイメージに最高の性的興奮を覚える人間だ。幾度となく危険な運転と車内での性交を反復するうちに、彼のエスカレートした嗜好はやがて死を招くだろう。

エロスとは観念的なもので、そのうちに物語を含んでいなければ成立しないと管理人は思っているが、彼らにとってのそれは、限りなく死に近いもの――しかも人間のテクノロジーが生み出した機械を媒介としていて、このような性的嗜好がリアルであるのか否かはしばらく措くとして、提示される主題は斬新だ。これでもかと繰り返される性交の描写にはいささか鼻白むけれども。

テクノロジーの発展によって病んだ人間の、ひとつのモデルとして興味深い。性と自動車衝突との結びつきは、エロスが死の姉妹であることを示している。自動車のフォルムへ感じる憧憬の背後に、このような情動が隠されていると仮定したら恐ろしい。


4488629121クラッシュ (創元SF文庫)
J.G. Ballard 柳下 毅一郎
東京創元社 2008-03-24

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