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zoom RSS 『夢みる宝石』 シオドア・スタージョン

<<   作成日時 : 2009/04/10 00:00   >>

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幻想的な愛の物語。

宇宙から来たとされる不思議な水晶が地球のあちこちに眠っている。彼らが夢をみるとき、動物や植物や人間が生まれる。生まれたいのちはオリジナルのコピーであって地球のいのちとは異質なのだが、完璧に複製されるために地球人には区別できない。地球にはそういった水晶の夢の産物であるいのちがいくつも生きている。

物語の主人公ホーティは孤児で、ある夫妻に引き取られて育てられていたが、気味悪い素行が原因となって追い出される。さまよったのちにカーニヴァル団に拾われ、そこで団長のモネートルを知ることになる。
モネートルは水晶の秘密(の一部)を知っている数少ない一人だ。彼は水晶に邪悪な意思を伝達し、彼らの夢の産物が人類にとって害毒となるよう仕組んでいる。そうすることによって、かつて自分を疎んじた人間たちに対して復讐していたのだ。このモネートルの野望を阻もうと、ホーティはじめカーニヴァル団のメンバーたちは協力し合って立ち向かう。

水晶はペアで夢をみなければ、不完全ないのちしか創出できない。奇形のいのちとは単独の水晶による夢なのだ、とする著者のあたたかな視線がよい。カーニヴァルに集う彼らの、ふつうの人間への憧憬はあまりに人間的なもので、これとモネートルの非情さを対比させることで真に人間であるとはいかなることかという問いが提出される。「ほかと違う」がゆえに孤立せざるをえなかったいのちが、愛や連帯といった結びつきによって解放あるいは救済されるという筋が心地よい。やはり物語は希望の光であってほしい。

やがてある女の手紙の形式で述べられる最終章には感動する。まさに夢のなかのくちづけのように、甘く美しく、この幻想的な物語を締めくくるだろう。そして、われわれ人間もまた誰かの夢の産物なのかもしれない、そんな足元が覚束なくなるような不安を誘うのも本書の大きな魅力のひとつだ。


4150115486夢みる宝石 (ハヤカワ文庫SF)
Theodore Sturgeon 永井 淳
早川書房 2006-02

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