epi の十年千冊。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『モロー博士の島』 H・G・ウェルズ

<<   作成日時 : 2009/04/14 00:00   >>

トラックバック 0 / コメント 0

SFの始祖ウェルズによる、人造生命が主題の物語。

海難事故ののちに語り手が到着したのは、人間とも動物ともつかぬ異形の者たちが暮らす島だった。10年前にロンドンから消息を絶った天才生理学者のモローこそこの島の主人であり、彼は動物たちに外科手術を施し、知能を与え、人工生命の究極に迫ろうと実験を繰り返していたのだった。不気味な獣人たちが闊歩するこの島で、語り手は悪夢のような体験を一年にわたってすることになる。

メアリ・シェリーのフランケンシュタインと並んで、ウェルズのモローもマッド・サイエンティストの代名詞としてよく用いられる。科学の限界を極めようとする知的情熱は、世間の倫理と抵触せざるを得なくなる地点があって、殊に本作で扱われる人造生命の問題は、現代において遺伝子工学の問題として非常に身近になっている。本作が発表されたのは1896年で、一世紀以上も前になる。倫理の点からは問われないものの、この問題を予見したウェルズの慧眼には驚かされる。

人間による生命の創造は、神の領域を侵犯することだ。動物たちは自らのうちに自足しているのに、なぜ人間だけが人間であることに自足していられないのか。まさにこの点に人間的な要素を見出せるだろう。松浦寿輝氏の『川の光』で、一匹のねずみが、知識をもてないがゆえに動物は幸福でいられるのではないか、と述べるくだりがある。であるのなら、飽くなき探究心と畏れを知らぬ知識欲を与えられた人間に幸福はありうるのか。


4488607071モロー博士の島 (創元SF文庫)
H.G. Wells 中村 融
東京創元社 1996-09

by G-Tools

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『モロー博士の島』 H・G・ウェルズ epi の十年千冊。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる