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zoom RSS 『動物化するポストモダン』 東浩紀

<<   作成日時 : 2009/05/01 00:00   >>

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ポスト近代を現代日本のいわゆるオタク系文化から考察する。

本書の掲げる鍵言葉は大きく分けて3つ。「大きな物語の凋落」と「シュミラークルの増殖」と「動物化消費」。

かつて近代国家を近代国家たらしめていた政治や経済のシステム。イデオロギーや生産流通の方式。これらの総称を「大きな物語」と呼ぶ。ポスト近代にあってはこれらのシステムは有効性を失い、その空白を埋めるようにしてオタク系文化が登場する。かつては「大きな物語」を通して自己を決定していたのが、ポスト近代では逆に、自己が物語を読み込むようになる。近代が「大きな物語(世界)」→「私」というツリー型のモデルであったとすれば、ポスト近代では「私」→「世界」という世界観になる。この世界観をデータベース・モデルと呼ぶ。
アニメ鑑賞にたとえると、架空の歴史物語である『機動戦士ガンダム』における(架空の)年表の空白を埋める作業に没頭するのがツリー型の鑑賞、『新世紀エヴァンゲリオン』で舞台設定には注目せず、キャラクターだけ借りて同人作品を作ってしまうのがデータベース型の鑑賞。

データベース型の世界観にあっては、オリジナルの作品はコピー(同人作品)を生み出す基礎情報に過ぎなくなる。
オリジナルは絶対的な価値を失い、すぐれたコピー作品と同等になる。このオリジナルとコピーの中間ともいうべきものを、フランスの社会学者ボードリヤールはシュミラークルと呼んだ。シュミラークルは同人作品だけではなく、オリジナルから派生した関連アイテムも含める(『新世紀エヴァンゲリオン』の『綾波育成計画』のような)。

データベース型社会をシュミラークルが席巻する。そしてオリジナルであろうとコピーであろうと差を問わずに同等に扱い、自己の快感原則を満たす商品と戯れる消費者が登場する。このような状態をフランスの哲学者コジェーヴは「動物化」と呼んだ。

ポスト近代をオタク系文化から考察するとこのようになるらしい。要するにすべては情報に還元されてしまい、それを消費する消費者がいるということになる。


本書中の論説には疑問もあるけれども(日本のオタク文化は敗戦のトラウマから発生した等)、日々オンライン上でたとえばMADムービーをYou Tubeで見ることが当たり前になっている現在では、オリジナル作品は二次創作のためのデータベースとして消費されている、という指摘には頷ける。しかしそれは昨今に限ったことではなく、パロディという形式でならもっと古く芸術の分野にあったことだし、たとえば(畏れ多いが)ダンテの『神曲』なんて、キリスト教とヨーロッパの歴史をデータベースとして利用した(優れた)同人作品だといえなくもないのではないか。そういえばダンテは、ろくに口もきいたことのない女を遠目に見て一目惚れして一生愛し続けたというアレな性格だったらしい。
テクノロジーの進歩とインフラの整備によって二次創作はダンテの時代よりより多様でより身近になっている。You Tubeを見ていて、「これ金とれるんじゃねえの?」と思うことなどしょっちゅうだ。著作権の問題が絡んでくるので安易に意見できないが、こうして可能性が開かれるというのは悪の一面ばかりではないように思える。E・M・フォースターによると、古代ギリシャの詩人たちは自らが作った詩に署名せず、後世の人間はそれに手を加えてさらによいものにしようとしたという。大事なのは作品というわけだ。しかし現代では創作者は職業なのだ。彼らは食っていかなければならない。


4061495755動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
東 浩紀
講談社 2001-11

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データベース化した社会ではなつかしいものと再会することがある。ゲームボーイが作られてもう20年か。今でもこの『聖剣伝説』は世界一のRPGだと思っている。


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動物化するポストモダン 〜オタクから見た日本社会〜
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ストロボフィッシュ
2009/06/06 10:12

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