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zoom RSS 『アルゴールの城にて』 ジュリアン・グラック

<<   作成日時 : 2009/05/29 00:00   >>

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人里離れたブルターニュの古い城館を舞台にしたシュルレアリスティックな物語。

筋といって特にない。古い高貴な家柄の末裔である陰鬱な美青年が、アルゴールの城館を買い取り、訪問してきた彼の友人と、友人の連れてきた美しい女との三人で、夏から冬のはじめまでを過ごす。周囲は森に囲まれ、川が流れ、遠く海が望める。ときに雨が降り、ときに嵐が襲う。広すぎる城館のなかで、若い男女は幽霊のように静かに時のなかをさまよう。

この小説の特徴および魅力は、著者の文体にあるだろう。比喩に比喩を重ね、示すところは曖昧なままで、まるで悪夢の記述を読む気分にさせる。登場人物は三人だけで(厳密には従僕をいれて四人だが彼は二度しか登場しないので省く)物語は起伏に乏しい。森を散策し、海へ水浴に出かけ、けれども若い彼らのそういった動きにも青春の爽やかさは微塵もなく、ヴェールのかかったスクリーンを通じて人形芝居を見るような味気なさだけがある。会話は一切ない。この奇妙な小説を翻訳するにあたって、訳者はずいぶんと苦労したのではないだろうか。

わかりやすく定義するなら、シュルレアリスティックなゴシックロマンというところか。しかし属性よりも、この書法にこそこの小説の唯一無二の特徴があると思うので、こういった区分けはあまり意味がないだろう。筋がないと述べたが、序盤に敷かれた伏線が終盤で活きるなどしっかりとした骨格をもってもいる。詩的な文章の意味を追うことに注意が向くので眠くなることはなく、細かく章分けされているので意外とあっさり読めてしまう。倉橋由美子の偏愛の一冊でもある。

4560070792アルゴールの城にて (白水Uブックス)
安藤 元雄
白水社 1989-05

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