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zoom RSS 『打ちのめされるようなすごい本』 米原万里

<<   作成日時 : 2009/06/22 00:00   >>

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2006年に逝去した著者による、書評の全作品を網羅した一冊。

二部に分かれていて前半は文藝春秋に連載していた「私の読書日記」、後半は各紙誌に寄せた書評となっている。書評者としての米原氏の特徴については巻末の解説で丸谷才一氏が述べていて、
1.本をおもしろがる能力が高い
2.褒め上手
3.一冊の本を相手にするのではなく本の世界と取組める
の3点を挙げている。なるほど、雑多なジャンルの本をすべて同じように読めて、楽しめて、褒めるときは手放しで賞賛でき、教養と知性とユーモアを兼ね備えていれば、これはもう最上の書評者といえるだろう。とくに重要と思えるのは3で、丸谷氏は「村上春樹の小説を一冊しか読んだことのない人間に村上春樹の書評はできない。ほかの作品を読んで、フィッツジェラルドやチャンドラーも読んだ人間が村上春樹の書評ができる」みたいなことを述べていて、たしかに本の世界全体のなかに読んだ本を位置づけて見取り図を示せるようでなければ書評とは呼べないだろう。本ブログがいつまでも感想文の域に留まらざるを得ない理由でもある。

よい書評とは、それを読んだ人間が、取り上げられた本を読みたいと思えるものだろう。一度読んだ本であったとしたら、再読したいと思わせるもの。メモを取りながら本書を読んでいたら、かなりの量の読みたい本のリストができあがって、しかも自分の本選びの傾向とは異なるタイプの本が多くなったので、これは世界を広げるよい機会になったと喜んでいる。自分と似た傾向をもつ書評者はもちろんよいけれど、異なるジャンルを教えてくれる書評者もありがたい。米原氏はロシア語通訳であったからかの国に関する本が多く取りあげられている。

本書のうちで圧巻なのは、「私の読書日記」中の「癌治療本を我が身を以て検証」の章だ。卵巣癌が見つかった著者は、闘病生活の合間にも膨大な量の癌治療関連書籍を読み漁り、批判や比較を行う。「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」という一文に、とてつもない知的体力を見てただため息が出る。まさに打ちのめされるようなすごい人だ。

巻末に作品名および著者名索引が付いている。

4167671042打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)
米原 万里
文藝春秋 2009-05-08

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
文庫本解説を丸谷がやっているので、あれあれ。。と思いましたが。。
今生きていたらナニを発言したろうか?と、いつも考えます。

古井戸
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2009/10/08 04:43

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