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zoom RSS 『通話』 ロベルト・ボラーニョ

<<   作成日時 : 2009/06/24 00:00   >>

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チリ出身の作家による、人の生のいたましさを垣間見せる14の短編を収録。

三部構成になっており、それぞれに似た趣の短編がまとめられている。
「通話」は、主として文学をめぐる短編を収める。冒頭の「センシニ」は出色の出来で、貧しい暮らしを送りながら家族と暮らし、文学賞にひたすら応募し続けている初老の作家と語り手との交流を描く。書くことを愚直に実践し続ける作家の静穏さに気持が静かになる。この作家は実在のアルゼンチン作家がモデルになっているという。堀江敏幸氏が本書に推薦文を寄せているが、本書中でもとくに「通話」にまとめられた短編はいかにも氏が好みそうに思える。ほかに、作家としては大成できなかったが、一人の人間としては偉大だったフランス人の物語「アンリ・シモン・ルフランス」も印象深い。

「刑事たち」は、主として現代史を物語に託して語る。本書中でもっとも不安と恐怖の色が濃くなり、「ウィリアム・バーンズ」では狂気や不安といったスリラー的な要素が強く、読んでいて怖くなる。「刑事たち」は1973年のチリ・クーデターに関わった二人の男の対話形式で成っており、終わりに近づくにつれて気味悪さが増す仕掛けになっている。

「アン・ムーアの人生」は、それぞれ女が主人公の短編を収める。失業や貧困、暴力や奔放な性や精神の病といったいかにも現代的な問題が女たちの人生に影を落とす。しかし、それらの暗さに愛はかぼそい光のように差すだろう。病床にある中年のポルノ女優が自らの半生をいとおしさをこめて回想する「ジョアンナ・シルヴェストリ」といい、幾度も迷い傷つきながらもたくましく生きる女の、これも半生記である「アン・ムーアの人生」といい、読み終えてああ楽しかったと頁を閉じることができる類の短編ではないけれども、暗澹たる人生のいたましさの奥に、不思議と読む者のこころを暖かにするものが残る。

全編を通じては、ドライの一語に尽きる一冊。今後、著者の代表作である長編『野生の探偵たち』が本エクス・リブリス・シリーズから刊行予定だという。

4560090033通話 (EXLIBRIS)
Roberto Bolano 松本 健二
白水社 2009-06

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