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zoom RSS 『もののはずみ』 堀江敏幸

<<   作成日時 : 2009/06/27 00:00   >>

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著者が、主としてパリで出合った古道具たちにまつわる掌編を50編収録。

子どものころから、日用品や電化製品や文房具や玩具といった身のまわりにある「もの」たちに関心があった、と冒頭で著者は述べる。美濃焼の産地に生まれた著者にはそれらの「もの」たちに対してはっきりとした好みがあって、「自分と同時代に生まれたきらびやかなものではなく、また極端に古くて実用に耐えないものでもなく、以前はよく見かけたけれど、最近ではすっかりすがたを消してしまった、「ほんのちょっとむかしの」製品」にこそ惹かれるという。レトロな中古品には、以前所有していた人たちの記憶があり、ものたちはその記憶を、時間の堆積を語ることになるだろう。これが物語(り)だ。

読んでいくと、よくもまあこんなにいろいろと買うものだと感心してしまうほどに、著者はさまざまなものたちを古物市や古道具屋で購入していく。自身「がらくた」と読んでいて、ぬいぐるみや陶器、ヨーヨーや色鉛筆やドアノブはまだしも、さらにはネームタグやバスのランプといったおよそ実用とは縁遠いものたち。これらが著者の手にかかるとなんとも魅惑的な、記憶を語るものに瞬時に変貌してしまう。小説ともいえてエッセイともいえるだろう著者の散文には読む者のこころをおおらかにさせ、ゆるやかに包み込むやさしさがある。現代日本の若手作家のなかで、管理人は著者をもっとも好んでいるし、信頼している。

村上春樹の『1Q84』のヒロインは質素な生活を愛し、身のまわりにものを溜めようとはしない。マイケル・マン監督の映画『ヒート』でロバート・デ・ニーロ演じる犯罪者は、警察の手が迫っても30秒以内に逃走できるよう、部屋には必要最低限のものしか置かない。これら引き算で成立するライフスタイルには規律的なストイシズムが窺えて純粋に美しいと思うし、日々ものを溜め込んでしまう管理人は憧れさえする。しかし、上記の彼らとは正反対のライフスタイルを送る著者の、ものたちの発する声に耳を傾ける暮らしにも羨望を覚える。直接的には実用性にやや乏しくても、いや乏しいからこそ、そこに純粋な贅沢さを見てしまうから。消費は贅沢な行為であれ。


4043908016もののはずみ (角川文庫)
堀江 敏幸
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-06-25

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