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zoom RSS 『第七官界彷徨』 尾崎翠

<<   作成日時 : 2009/07/06 00:00   >>

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80年前に書かれたとは思えない、いま読んでも新鮮な驚きを与えてくれる一編。

第七官とは、人間の五官と第六感を超えた感覚だという(第七官が具体的にいかなるものであるのかについての記述は出てこないのだが)。この感覚に響くような詩を書くのを夢みる少女、小野町子が語り手となる。彼女は祖母と暮らしていた家を出て、二人の兄と従兄が暮らす家に女中代わりに住み込む。
同居する長兄の小野一助は心理学者で、何でもかでも異常心理と結びつけて考える癖がある。次兄の二助は部屋のなかを畠にして、そこで蘚の恋愛を研究している。従兄の三五郎は音楽予備校の生徒で、古いピアノで演奏する。ほかに数人登場する脇役たちも一風変わっていて、この小説には変人ばかりが登場する。作者は正常心理を扱う小説に飽きたので非正常心理を扱う小説を書いてみた、と自作について述べていて、たしかにこんなにシュールでキュートな小説をよく書いたものだと感心する。

変人たちも恋をする。とはいえ、扱われる恋愛は極めて控えめなものだ。町子の語りは朴訥としていて、そのために切なさが増す。少し幼稚で、少しシャイな、彼らの変な恋が読んでいて楽しい。著者自身の造語があり、煩瑣な事柄に執着する特異な心理の披露があり、通常ありえない設定がある。まさに感覚的に味わうべき小説だろう。本書自体が、もしかすると町子の詩――第七官に訴える詩――だったのではないかという気もしてくる。
文章は平易。ただし癖があるので読者を選ぶだろう。巻末に著者による解説がある。

4309409717第七官界彷徨 (河出文庫 お 19-1)
尾崎 翠
河出書房新社 2009-07-03

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