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zoom RSS 『さよなら、愛しい人』 レイモンド・チャンドラー

<<   作成日時 : 2009/09/03 00:00   >>

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村上春樹氏による新訳版『さらば愛しき女よ』。

『ロング・グッドバイ』に続くチャンドラーの「マーロウもの」の長編新訳。
私立探偵のフィリップ・マーロウは、大男のへら鹿(ムース)マロイが酒場で殺人を犯す場に偶然居合わせる。彼は8年間の刑期を終えて出所したばかりで、かつての恋人ヴェルマの消息を探していた。殺人ののち行方をくらましたマロイを警察は追うが足取りはつかめない。マーロウのもとには謎めいた依頼の電話がかかってきて彼はそれを引き受けるも、またしても殺人事件が起きて、今度はマーロウ自身も巻き添えを食って怪我をする。第二の殺人事件は世にも稀な翡翠のネックレスをめぐって起きた。このネックレスの持ち主である夫人のもとを訪れたマーロウは、自分が首を突っ込んだのが複雑な事件であるのを知る。独自に調査を開始するも、彼の身はたびたび危険にさらされる。大男マロイの行方は依然知れない。無関係に思われた第一と第二の殺人だったが、この二つの殺人事件を結ぶのが、ムース・マロイの哀しく一途な恋だった。

本書は、「マーロウもの」の長編としては『大いなる眠り』に続く二作目になる。『ロング・グッドバイ』からさかのぼること14年。訳者もあとがきでふれているが、本書のマーロウは『ロング・グッドバイ』のときよりも若いのか、あるいは14年のあいだに年を重ねて老成したチャンドラーの変化か、よくも悪くも軽やかだ。ときに過剰なまでに皮肉を口にし、それがために痛い目に遭う。『ロング・グッドバイ』のマーロウのかもし出す中年男の苦みのようなものはあまり感じられない。本書に登場する魅力的な二人のヒロインに対するマーロウの接し方も、ずいぶん若々しい印象を受ける。

マーロウは幾度もぶちのめされ、ときには殺されかけもするのだが、最後には事件を解決する。とはいえ結末は哀しいものだった。男の、愚かしいまでに一途な想いなど、女は一顧だにしていなかったのだ。だからといって女を責めることはできない。彼女には彼女の人生があった。本書最後の一節が、強く印象に残る。
「しかしさすがにヴェルマが向かったところまでは見えなかった」。


村上氏による新訳チャンドラー、次は『リトル・シスター』を予定しているとのこと。

4152090235さよなら、愛しい人
村上春樹
早川書房 2009-04-15

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415070452Xさらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))
清水 俊二
早川書房 1976-04

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