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zoom RSS 『シチリアでの会話』 ヴィットリーニ

<<   作成日時 : 2009/09/16 00:00   >>

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反ファシズムレジスタンスの精神的基盤となった小説。

シチリアの架空の村(「母のところ」)に帰郷した語り手は、行く先々で出会う人々と対話する。単純な筋で、登場する人物は決して多くはない。しかし本書は一筋縄ではいかない小説だ。登場人物は一人ひとりが象徴として機能していて、それを念頭に彼らの発言を読むことが本書を理解するのに必要とされるからだ。象徴されるのは、たとえば聖母、教会権力、レジスタンスの闘士、ムッソリーニ。彼らの発言と、彼らの扱いを読み込むことで、この小説がファシズム当局の弾圧を逃れて版を重ね、当時熱心に読まれた理由が明らかになる。

ヴィットリーニはスペイン内戦に衝撃を受けて本書の執筆を決意した。彼は親ファシズム派であったが、スペイン内戦によって信じていた政府がかの国で無辜の市民を虐殺している事実を知り転向する。検閲をかいくぐるために小説は象徴的手法がとられ(そもそも小説の舞台からして特定できない)当時の政治状況を詳しく知らない人間には巻末の100ページにも及ぶ解説が大いに助けとなる。これを読まなければヴィットリーニの意図はほとんどつかめなかった。しかし著者の意図が十分に理解できなかったとしても本書は魅力的な小説だ。無駄がそぎ落とされた単純で力強い文体は、短いセンテンスの連続が音楽敵な喜びを与えてくれる。また、登場人物が口にする謎めいた発言や矛盾する発言も、謎とき的な楽しさがある。古今東西の小説に通暁しているわけではないから断言はできないが、ちょっと類を見ない小説ではないだろうか。全編に漂う乾いた哀しみの雰囲気もよい。政治的な面を除外しても充分読み応えのあるすぐれた作品であり、やはり小説は言葉がすべてだと再確認させてくれる。

4003271513シチリアでの会話 (岩波文庫)
Elio Vittorini
岩波書店 2005-02

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