epi の十年千冊。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『獄中記』 佐藤優

<<   作成日時 : 2009/10/12 00:00   >>

トラックバック 0 / コメント 0

『国家の罠』の著者が東京拘置所で過ごした512日間の記録。

「鈴木宗男事件」で逮捕された著者は独房で512日を過ごすことになる。公判の準備と並行して、外交官時代には多忙のためにできなかった語学、哲学の勉強を徹底的に行う。弁護士や友人から書物を差し入れてもらい、学ぶための読書に集中する。孤独な状況下で自らの内面と向き合う。外交官としての死を受け入れてなお、国家の将来を思わずにはいられない。獄中から外務省の後輩へ幾通もの手紙を出し、先輩としてアドバイスする。裁判後の、第二の人生についての計画を立てる。

所与の条件下で最善を尽くすこと、これが著者の信念なのだろう。外交官時代は骨身を惜しまず国益のために奔走したと自負する。しかし国策捜査の対象となり、外務省からも切られたいまとなっては二度と職場に戻るつもりはなく、自身が本当にしたかった神学研究にこの先は身を捧げようと決意し、膨大な量の関連書籍を読み込み、ノートを作成する。著者が512日間の拘留期間中に作成したノートは60冊を超えた。独房という孤独な、人によっては精神に変調をきたしかねない状況を逆手にとって読書と思索に没頭する禁欲的なその姿は修行僧のようにも見える。春夏秋冬を経験しないと拘置所暮らしについて土産話もできないだろうから長期的にがんばりたい、という一節があるが、著者のタフネスをよくあらわしている。

「小さな政府」を標榜する小泉政権の改革路線と対立する政治家であったために鈴木宗男氏は逮捕された、と著者は「鈴木宗男事件」について分析する。
○小泉改革の目指すものはなにか。一言で言うと、日本の基礎体力回復による生き残りである。平等主義、弱者保護路線を切り捨て、強い者をますます強くし、機関車とすることにより、日本を引っ張っていこうとする。そのためには国民の圧倒的大多数に裨益しない政策を遂行する必要に迫られる。この点を隠すためにナショナリズムを煽り、また、人為的に「抵抗勢力」(国民の敵)を作り出す。

○鈴木路線とは何か。改革の必要は認めつつも、急速な構造改革は非現実的であるとし、段階的再編を主張する。現下の日本の基礎体力はまだ十分な潜在力を有していると考える。いわゆる「宗男疑惑」の対象となった事案の大部分は、図式的には公平配分を指向する動きである。

○小泉改革下、外交は「金食い虫」で、レトリックはともかく、当面は内政に力を集中し、外交は「ひと休み」する。

○鈴木路線では、日本は多少経済的に苦しい状況にあるとしても、国際的には十分体力のある大国なのだから、応分の国際貢献が必要となる。

この対立の図式が、「時代のけじめ」としての国策捜査へとつながった。著者はそう述べる。

投獄された直後の決意表明や、鈴木事件を鍵に日本の国益についての記述が中心の前半部分は、知的刺激を受けるという意味でも読み応えがあって夢中になったが、哲学者や神学者の名前や専門書籍の解読等についての記述が多くなる後半は、知識がなく訓練も受けていない管理人には理解できない部分が多く難解だった。

逆境をバネにするという言葉があるが、著者はまさにそれだ。プロテスタントである著者は、裁判の経過に伴い、かつての同僚が自分を裏切る場面に遭遇しながら、それを是として受け止めるだけの度量がある。誰をも恨まず、誰をも裏切らず、廉潔に振舞う。真の正義は自分の側にあると信じて。この姿勢に感銘を受けずにはいられない。

巻末に、著者が獄中で読んだ書籍のリストがついている。

4000228706獄中記
岩波書店 2006-12

by G-Tools


文庫版もある。
400603184X獄中記 (岩波現代文庫)
岩波書店 2009-04-16

by G-Tools



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『獄中記』 佐藤優 epi の十年千冊。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる