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zoom RSS 『あなたの魂に安らぎあれ』 神林長平

<<   作成日時 : 2009/10/18 00:00   >>

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人間とアンドロイドと救いの神の物語。

放射能に汚染された火星が舞台。地上では暮らせない人間は地下に空洞都市を作り、そこで暮らしている。地表ではアンドロイドたちが高度なテクノロジーを駆使した都市生活を営み、彼らが供給するエネルギーによって人間たちは生活を維持している。アンドロイドを作ったのは過去の人間たちで、彼らは人間に奉仕するようプログラムされているが、あなぐらで惨めに暮らしている人間たちを敬う気持は廃れて久しく、いまでは人間たちを見下している。地下での生活を余儀なくされている人間たちの側でも、アンドロイドにエネルギーを依存していながら、自分たちよりも豊かな暮らしを満喫しているアンドロイドたちを妬んでいる。これまでは何事もなく共存してきた二種族だが、いまや一触即発の不穏な空気が流れている。一部の人間に限っては、アンドロイドを面白半分に破壊するのを娯楽とするまでにこころは荒みはじめていた。
いまでは迷信扱いされているが、アンドロイドたちには古くから伝わる言い伝えがあった。いつの日か、神エンズビルが天から降りてきて、すべてを破壊してすべてを創造するだろう、という。物語は、人間とアンドロイドの反目、抗争、そしてエンズビルの降臨が筋となる。

本作に登場するアンドロイドはロボットではなく、限りなく人間に近い有機生命体だ。外見では人間と区別がつかないのはもちろん、血も通っている。性交もする。たとえばディックの小説に出てくるレプリカントとは違うのだ。このアンドロイドの不思議な身体構造の意味も、終盤のエンズビルの降臨によって明らかになる。

虚と実が本作の主題のひとつとなっている。地下に追いやられた人間たちは機械装置によっておのれの感覚を偽り、幻に頼って生きている。こんな偽られた生に何の意味があるのかと登場人物の一人は問う。むろん答えなどない。ただ苛立ちが募り、絶望を深めるだけだ。やがて彼は狂気に憑かれるだろう。

物語は終盤にいたって意外な展開を見せる。加速度を増して進むので一気に読まずにはいられない。しかしそこにいたるまでにいくつか展開上の無理があるのが気になった。なによりも、後半は人間とアンドロイドの戦争になるのだが、そもそもアンドロイドは人間を殺せないようプログラムされているのに、平気で銃を乱射するのは小説の破綻ではないのかしらん。まあおもしろく読めたからよいのだけれど。

本作は、続編の『帝王の殻』と『膚の下』と合わせて三部作となっている。

4150302154あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)
早川書房 1986-03

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