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zoom RSS 『告白』 町田康

<<   作成日時 : 2009/11/02 00:00   >>

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明治時代に大阪で起きた「河内十人斬り」事件をモチーフにした長編。

金剛山麓の農村、赤坂村字水分で暮らす城戸熊太郎は農家の長男だが、仕事は一切する気がなく、博打を打ったり酒を飲んだり女を買ったりでその日その日を暮らしている。すでに三十歳を過ぎており、村の人たちは家族を含めてみな熊太郎を毛嫌いしているが、唯一彼を慕っているのが舎弟の谷弥五郎だった。
松永家という村の有力者一家がいて、この家の長男松永熊次郎はたびたび熊太郎とトラブルを起こしていた。この熊次郎の弟の寅吉は、熊太郎の内縁の妻、縫と姦通していた。ことを知った熊太郎は激怒し、谷弥五郎と二人で松永家を襲う。松永家の者は赤子も含め殺害されるが、肝心の寅吉は襲撃の夜村を出ており難を逃れた。熊太郎と弥五郎は山に身を潜めるも、最後には死体となって発見される。

実際に起きた事件をモチーフに、著者がいわんとすることを述べる小説。小説は熊太郎の生い立ちを子どものころから順を追って書くが、ここで披露される挿話は著者によるフィクションだろう。著者は熊太郎の人物を借りて、ひとつのことを幾度も繰り返す。それは、どれだけ語っても語れないものが残る、ということだ。熊太郎は子どものころから何度となく、自分のいわんとしていることを他者に伝えられないというもどかしい思いをしてきた。頭のなかでえんえんだべり、それを他者に開陳すると饒舌になる。他者はそれを気味悪がって離れていく。熊太郎には無念さだけが残る。思考と言葉が一致しないという問題にもふれるが、河内弁でされる熊太郎の思考にときおり東京弁や女言葉が混じるのにも熊太郎の言葉の混乱をよく示している。

内省的であるがゆえにはみ出し者とならざるをえない詭弁的な熊太郎も興味深いが、この小説に登場するほかの人物たちの造形も魅力的だ。陰湿な悪意の塊のような松永熊次郎、ひょうきん者のふりをして根は悪どい松永寅吉、何かと銭銭口にする縫の母親のトラ。陰湿な人物たちの言動を追っていると陰鬱になりがちだが、著者は切迫した状況でも軽快さとユーモアを忘れない。熊太郎の行動に対して著者自ら「あかんではないか」とツッコミも入るのだ。

最後には破滅が待っている悲しいお話。そこにいたる経緯をおもしろおかしい挿話で書き、読者をぐいぐい引っ張っていく。久しぶりに徹夜で読んだ小説。ただ最後の章は蛇足だったのではないだろうか。

4122049695告白 (中公文庫)
中央公論新社 2008-02

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