epi の十年千冊。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『月夜見』 増田みず子

<<   作成日時 : 2009/11/06 23:45   >>

トラックバック 0 / コメント 1

血のつながらない母と娘のかかわりの物語。

岩崎百々子は中年の作家。87歳の継母が倒れ、彼女が経営するアパートの管理人となる。百々子の実父は30年前に他界していて、実母の行方は知れない。父親が継母と浮気したのが原因で離婚し、そのとき百々子はまだ子どもだった。

千代というこの継母と、百々子は子どものころから打ち解けられなかった。千代のほうでもそうで、二人はお互いに言葉がかみ合わず、うまく意志を伝えあうこともできず、妙な食い違いを互いに感じさせながら暮らした。百々子が中学生のときに実父が突然に亡くなり、その後彼女が高校を卒業するまで一緒に暮らしたのだが、二人はいつまでも他人のままだった。

千代が倒れたために彼女の仕事を引き継ぐかたちで生家であるアパートに戻った百々子。このアパートはもとは下宿で、夫の死後に女手ひとつで暮らしていくために千代がはじめたのだった。アパートの管理人となることで家賃収入が入れば、売れない作家であるいまの自分の懐も心強くなるだろうと思っていた百々子だったが、実際には収入の大半は千代の入院費で消えてしまう。千代の具合はよくならない。彼女をモデルにして小説を書いてみよう、と百々子は思い立つ。

小説は主として母と娘の関係をめぐってなされる。百々子にとって、幼いころから愛情など覚えたことのない継母への感情は冷めたもので、ときには意地悪にもなる。けれども彼女を憎んでいるのかというとそうではなくて、ときに優しい気持になりもする。この微妙な心情がリアルを感じさせる。ときに嫌悪の側に揺れ、ときに親しさの側に傾く。人間の感情は不安定なもので、百々子の継母への反応は人のこころの機微をよくあらわしている。他人同士が家族になると、こうも複雑な感情のプロセスを経るものなのだろうか。オカルトめいた要素が、不思議な読後感を残す。


4062105497月夜見
講談社 2001-01

by G-Tools

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
増田さんの作品は、だいたい読んでいます。読後、断定が無いぶん、いろいろな解釈が可能なので、愉快。断定されるとそれ以上に広がらない。余白を残して終わるのが魅力です。
本オタク
2010/04/26 15:16

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
『月夜見』 増田みず子 epi の十年千冊。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる