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zoom RSS 『膚の下』 神林長平

<<   作成日時 : 2009/12/22 00:00   >>

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『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く三部作の完結編。

三部作は発表順に時代をさかのぼっていく。『帝王の殻』は『あなたの魂に安らぎあれ』の80年前、本作はさらに170年前の物語となる。舞台は月との戦争によって荒廃した地球。人類は火星への移住を段階的に進めている。しかし政府主導のこの移住計画に反対する一部の人間たちは隠れ潜み、反乱軍を結成して政府に対抗しようとしている。
政府が考案した移住計画は以下のとおり。人間が火星に移住したのち、荒廃した地球を復興させるために機械人たちが働く。この機械人たちを監視する役割を担うのが、遺伝子工学によって生み出された人間そっくりの人造人間アートルーパーだ。主人公の慧慈(けいじ)軍曹はアートルーパーのプロトタイプ、エリートとして生まれた。限りなく人間に近く、人間を凌駕する能力をもたされた人造人間。成長の過程で、彼は自己の存在意義について真剣に悩みはじめる。人間ではなく、アートルーパーとして生きるとはいかなることなのか、と。

人間の価値観ではなく、新しい価値観でもって地球と、そこに生きるすべての生命を守ろうとする慧慈。彼のアイデアによって火星移住計画は大幅な変更を見せる。人間同士の生命を奪い合う不毛な抗争のさなかにあって、慧慈は生命はいとおしいものだということを学んでいく。そして破壊的手段による地球の復興ではなく、創造的手段による地球の復興を主張することになる。

『あなたの魂に安らぎあれ』を先に読んでいる読者ならば、あの荘厳なラストシーンの真相が判明していくあたりには興奮するだろう。前2作に登場した地名や人物も出てくる。

慧慈には人造軍用犬がつねにそばについている。この犬へかける彼の愛情の描写は、人間以外の生命にも等しく価値があるという自明の事実を語る。人間によって作られた存在が、創造主を越えていく。この過程に、神話めいた壮大さすら感じた。

4150308810膚(はだえ)の下〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
早川書房 2007-03

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4150308829膚の下 (下)
早川書房 2007-03

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本作の前に『あなたの魂に安らぎあれ』を読んだほうが楽しめるだろう。『帝王の殻』は読んでいなくてもあまり影響がなさそうに思う。
4150302154あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)
早川書房 1986-03

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4150305242帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)
早川書房 1995-09

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