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zoom RSS 『或る「小倉日記」伝』 松本清張

<<   作成日時 : 2010/01/09 00:00   >>

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嫉妬や劣等感といった暗い情動を抱えた人間たちの物語を6編収録。

表題作は森鴎外に魅了された青年が、九州小倉に滞在していた作家の足跡を追って伝記的資料を収集するお話。この青年は生まれながら障害があり、それが彼のこころに翳を落としている。一心に資料を集めるも、なにぶん過去の出来事であり、容易にことは進まない。母親と二人三脚で自分の目標を追う姿は健気だが、その裏には障害をもって生まれた人間が、奇異の目で見てくる周囲への意趣返しの面も多分にあった。

「笛壷」「石の骨」「断碑」はどれも考古学研究者の物語で主題も通じる。能力はあるのに学歴がないために排他的な学者の世界から疎外され、侮られる主人公は屈辱感と劣等感に苦しむ。虐げられれば発奮するが、そのために私生活を滅茶苦茶にしてしまい、泥沼に落ち込む。負のスパイラルに陥る主人公の境遇には同情を禁じえないが、彼らは読者からの同情を撥ね退けるほどに孤高に猛烈に己の道を行くだろう。

管理人がもっとも感心した「菊枕」も主題はやはり上の作品と同じで、才能と容姿に恵まれた女流俳人が貧乏教師の妻だということに引け目を感じ、自身より裕福な俳人たちに嫉妬して、それを隠さない。誇大妄想に憑かれた彼女はついには正気を失い、精神病院に身を置く。なんとも暗い話だが、文章と展開の巧さで一息に読ませる。

社会派推理小説の作家として認知されがちな著者だが、本書を読めばまた違った優れた一面を知られるだろう。ほかに「父系の指」を収録。

4041227011或る「小倉日記」伝 (角川文庫―リバイバルコレクション)
角川書店 1997-02

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