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zoom RSS 『秘密の花園』 バーネット

<<   作成日時 : 2010/01/15 00:00   >>

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いのちが再び息を吹き返す。

インドで生まれたメアリはコレラによって両親を失い、英国ヨークシャーの叔父にひきとられる。叔父は10年前に妻を亡くしてからずっと塞ぎがちで、かなしい思い出の残る屋敷にいることは少なく、外国を旅行してばかりいる。屋敷に部屋を与えられたメアリは、使用人の一人からある話をきかされる。それは、この屋敷には入り口の扉に鍵をかけて封印された庭園があり、そこは亡き奥様がとても愛した場所だったという。興味をもったメアリはこの秘密の庭園を探すのに夢中になり、偶然から扉の鍵を手に入れる。なかに入ると荒れ果てている。しかし植物たちは死んではいなかった。メアリは、近所に住む、動物の言葉がわかる不思議な少年ディコンと知り合い、この庭園の再生に熱中していく。

叔父には一人息子がいた。名前はコリン。母親の生命と引き換えにこの世に生まれたきたこの少年は、かなしみに沈む父親とこころを通わせることができず、またいずれ成長すれば父親と同じ背中の病気に冒される運命にあるのだろうという周囲の憶測から自分は歩けない人間だと思い込み、車椅子で生活し、性格はひねくれていた。メアリは聞こえてきたコリンの泣き声をたどって彼と出会う。お互いに物質的に何不自由なく育てられてきた少女と少年はわがままや負けん気をぶつけ合い反目し合うが、コリンも花園の再生にとりくむ秘密のメンバーに加えられ、自然と接していくうちに頑なだったこころは溶けはじめ、ついには自分の足で地面に立ち、走ることもできるようになる。

庭園の植物たちの再生が、かなしみを背負った子どもたちのこころの再生と同調する。春の訪れに芽吹いたいのちは、夏を過ごして秋に凋落し、冬になると眠りにつく。季節のうつろいとともにある植物のいのちのリズムには、限りなく人間を癒す何か不思議な力がある。バートランド・ラッセルの『幸福論』に、ロンドンで育った子どもがはじめて郊外を訪れ大地のうえに素足で立ったとき、突然歓喜の涙を流し、言葉にならない叫びをあげた、というエピソードが紹介されている。このエピソードにも、本書と通じる生命のもつ癒しの力を思わずにはいられない。人間も植物同様に大いなる自然の一部としてこの地球に存在している、あたりまえのことなのに、それをつい忘れてしまう。

4334751288秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)
土屋 京子
光文社 2007-05-10

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