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zoom RSS 『バルタザールの遍歴』 佐藤亜紀

<<   作成日時 : 2010/04/16 00:00   >>

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ひとつの身体に宿った双子の物語。

ハプスブルク家の傍系の一族に生まれた語り手の名はメルヒオールといい、彼には双子の弟がいる。その名はバルタザール。この兄弟に天はひとつの肉体しか与えず、彼らはひとつの肉体に同居するふたつの魂というアンバランスな状態で生きるよう宿命づけられた。子どものころから「僕たち」と語る少年を身内は気味悪く感じ、周囲のそういった無理解のなかで過ごした少年時代の回想から小説ははじまる。

小説の舞台となるのは、オーストリア=ハンガリー帝国崩壊からナチス台頭にいたる時代のウィーン。貴族として生まれたメルヒオールとバルタザールは、自身の軽率さと親族の欲望とが招く転落の罠に嵌り、懐かしい生家や愛する女を捨てて外国に逃亡せざるを得なくなる。政治的背景と、それを利用した悪の跳梁。メルヒオールとバルタザールをめぐる欲望の巴模様。理由あって彼らを追う者たちと、彼らが追う者たち。展開が気になって先へ先へと促され、中盤を過ぎてのち、ようやく真の敵の存在が明らかになる。メルヒオールとバルタザールは知恵を尽くしてこの敵と対決することになる。その先には、まさしくタイトルにふさわしい遍歴を暗示する結末が待っている。

小説はメルヒオールによる語りが主になるが、ところどころでバルタザールも口を出す。ひとつの身体に宿っているとはいえ意識はそれぞれにあるため、片方が知らない部分を片方が補うかたちになる。奇抜な双子の設定は、歴史小説と幻想小説の二面性を備えた本作の結構をそのまま象徴するかのようでもある。

メルヒオールの語りはときにユーモアがまじり、展開は伏線が活かされており、単純に読み物として面白い。辛気臭さが微塵もないところが気に入った。

4167647028バルタザールの遍歴 (文春文庫)
文藝春秋 2001-06

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