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zoom RSS 『虐殺器官』 伊藤計劃

<<   作成日時 : 2010/05/07 00:00   >>

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9・11後の世界を幻視する。

先進国へのテロルが頻発する近未来。先進国側は防御策として個人情報認証システムを導入し国家は管理社会となるが、結果としてテロルを一掃するのに成功する。しかし一方で後進国では内戦による虐殺が加速度的に増加していった。その背後には常に一人のアメリカ人の姿が見え隠れする。ジョン・ポール、アメリカ人の言語学者。かつて国家的な言語研究プロジェクトに参加していたこの人物と、世界各地で多発する虐殺との関係は。
アメリカ情報軍の特殊部隊に所属するクラヴィス・シェパード大尉はジョン・ポールを追跡する。チェコ、インド、そしてアフリカへと。その旅の果てに、彼は人々を虐殺へと誘う器官のあることを知るだろう。

先進国の豊かさのために蹂躙される後進国。薄々は気づいていながら、自分たちの快適さのためにこの図式を見ようとしない先進国側の偽善を暴き出す。内戦状態に陥り、少年少女が殺されたり、強姦されたり、麻薬漬けにされた挙句兵士に仕立て上げられたり、そういった現実を嘆きもしよう、涙も流そう、ただし自分たちの国は安全が保証され、衣食住に困らない限りにおいては。
ジョン・ポールによる虐殺はこのエゴイズムの延長線上にあった。彼は狂気に憑かれた殺人者などではなく、明晰な頭脳と正気をもって、世界中の虐殺を操作していたのだ。虐殺の理由をシェパードに問われたポールは答えるだろう、自分は愛する人々を守るためにそれを行ってきたのだと。

搾取→テロル→報復という暴力の連鎖は断ち切れないのか。ポールの死後、「虐殺器官」を残されたシェパードはひとつの決断を下す。世界の安定化のためにあえて不安定を導入する。小説の結末は怖ろしいものとなるだろう。ポールの選択とシェパードの選択と、どちらがより正しいのか、正しさなど相対的に過ぎないのか、とするならどうすべきなのか、読了後は容易には答えの出ない問いがつきまとう。

4150309841虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
早川書房 2010-02-10

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