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zoom RSS 『ボートの三人男』 ジェローム・K・ジェローム

<<   作成日時 : 2010/05/27 00:00   >>

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タイトルに犬は勘定に入っていない。

19世紀の英国。自身は重病患者なのだと思い込んだ語り手は療養?のため二人の友人を誘い、飼犬を供に連れてボートでテムズ河をゆく計画を立てる。その途上でされる語り手と友人たちとのとぼけた掛け合いが笑いを誘う。そもそも小説の冒頭部分からしておかしい。気分がすぐれなかった語り手は自分の気鬱の原因を知ろうと博物館に出かけ辞典を読んでいくうちに、ほかにもあてはまる症状を示す病気が多いのを知り、辞典に載っているほぼすべての病気に冒されているのだと思い込んで絶望する。友人二人を誘いボート遊びの計画を練るも、荷造りをするだけで騒動になる。荷造りを終えたあとで入れ忘れたものに気づき、出発前に必要な歯ブラシを先にトランクに、しかも一番奥にしまったために再び荷をほどかざるを得なくなる。肝心の出発の前に早くも疲れてしまう。

ボートを漕ぎ出すと小説の赴きは少し変わる。基調はユーモアにあるとはいえ、そこで述べられるのはテムズ河畔の風物と英国の歴史の紹介になる。缶切りを忘れたために代わりの方法で缶詰を開けようとして四苦八苦したり、テントを張ろうとしてうまくいかず口論になったりと小事件は起きるものの、むしろ3人+1匹のボート旅行では彼らが過去に体験した出来事や誰それに聞いた話、そういった会話が笑いの種となる。
解説によると、もともと著者はユーモア小説を著する気持で本作を執筆したのではなかった。テムズ河畔の旅行案内記として構想し、実際の執筆過程で著者のうちにある気質がこのような笑いを誘う小説を生んだのだった。スラップスティックというよりは読者が自身の体験に即して共感する、そういう種類のユーモアで、たしかに旅行前に荷造りしていて失敗した経験は誰しも一度くらいはあるのではないか。

軽妙な文体と作風でありながらところどころで不意に色調ががらりと変わり、詩的な風景描写や生真面目な内省が挿入される。夜がもたらす慰めについて語り手が述べる第十章の末尾などはその最たるものだろう。このアンバランスさが本作の魅力のひとつになっている。

4122053013ボートの三人男 (中公文庫)
丸谷 才一
中央公論新社 2010-03

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