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zoom RSS 『モーパッサン短篇集』 ギ・ド・モーパッサン

<<   作成日時 : 2010/05/28 00:00   >>

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3部に分けて短篇を収録する。

T部は運命に翻弄される人々の物語を収める。
冒頭の「みれん」から素晴らしい。老齢の独身男が過去を回顧し、何事も為さなかった自身の人生を悔いる。彼の脳裏を、かつて焦がれた一人の女がよぎる。その女は今では友人の妻だが、かつて彼が熱烈に愛し、けれども友人に遠慮して諦めた想い人だった。今あらためて思い出してみると、彼女は彼のアプローチに満更でもなかったように思われる。そう考え出すといてもたってもいられなくなり、男は彼女のもとを訪れ、今更ではあるが自分はあなたを愛していた、あなたはどう思っていたのかと問う。女の口からは意外な答えが返ってくる。
寄り添うように生きてきた老齢の姉妹がいて、妹が死の間際に姉にあることを告白する「ざんげ」、一攫千金を夢みて挫折した男の顛末を描く「ジュールおじさん」、貧しい婦人がパーティに出席するのに友人に借りた高価な首飾りをなくしてしまう「首飾り」等、運命に翻弄される人間の弱さと愚かさを皮肉に描く。けれども基調が皮肉にあるとはいえ、『脂肪のかたまり』といい「ジュールおじさん」といい、社会的弱者を描くとき著者の視線にはあたたかみがある。ここにはほかに「ミス・ハリエット」を収録する。

U部はさまざまな相貌を見せる女の物語を収める。
歳をとってもなお若いころのロマンチックな夢に焦がれる女の喜劇「森のなか」や、男が、美しく貞淑な若い妻の死後に彼女の意外な一面を知る「宝石」等、男女関係を扱って著者の皮肉の調子はT部以上に強くなる。ほかに「旅にて」「逢いびき」「オンドリが鳴いたのよ」「ピクニック」「男爵夫人」「めぐりあい」を収録する。

V部は怪奇物語を収める。
濃霧のたちこめる夜、セーヌにボートを浮かべた語り手は碇に何かがひっかかり身動きができなくなる。通りかかった猟師に助けを求め、引き上げてみると黒いかたまりがひっかかっていた「水の上」、友人が亡き妻と暮らした城にお使いに行った男が遭遇する怪異「死せる女」等、幻想的な怪奇趣味の短篇が集められている。ほかに「亡霊」「眠り椅子」「死者のかたわらで」「髪」「夜」を収録する。

モーパッサンといえば代表作は長編『女の一生』だろうが、起伏に富んだ短篇の書き手としてもすぐれている。「みれん」や「首飾り」などは20頁に満たないが、そこに人生の悲哀が凝縮されていて、さらには落ちもついていて感心する。そういう意味ではT部に収録されていた作品がいちばん読みごたえがある。

4480426590モーパッサン短篇集 (ちくま文庫)
Guy de Maupassant
筑摩書房 2009-10-07

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