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zoom RSS 『フェードル アンドロマック』 ラシーヌ

<<   作成日時 : 2010/07/16 00:00   >>

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ラシーヌが描く恋の情念は、抗いがたい宿命の力。

「アンドロマック」では片思いの連鎖が情念の地獄を現出させる。
トロイア戦争において、英雄ヘクトールはギリシャの英雄アキレウスに倒される。トロイア落城後、生き延びたヘクトールの妻アンドロマックは、アキレウスの息子ピリュスの女奴隷にされる。ピリュスは敵将の妻に烈しく焦がれるが、亡き夫への愛に忠実であろうとする彼女はなびかない。業を煮やしたピリュスは女奴隷に、どうしても自分のものにならないのなら一人息子の命を奪うと脅す。
ピリュスには彼を愛する婚約者がいた。ヘレネーの娘のエルミオーヌで、彼女は婚約を忘れ敵方の女にうつつを抜かすピリュスを憎悪する。そしてこのエルミオーヌへ想いを寄せるのが、アガメムノンの子オレストだ。

オレスト→エルミオーヌ→ピリュス→アンドロマック とそれぞれが己になびかない相手を想って愛と憎悪の線を描き出す。そう、まさしく「愛と憎しみは情念の回転扉の二つの顔」であり、一方から一方へとたやすく変わる。いや、愛とともに生まれたとしても、憎しみは愛が死んだのちにも生き続けるだろう。

愛する者よりも、愛される者のほうが優位に立つ。この愛の優位性と、権力の逆転関係が興味深い。愛と憎悪の連鎖の極みにいるのは、敗国の未亡人アンドロマックなのだ。

各人が己が欲望を満たそうと策謀をめぐらす、ときに近視眼的な判断にもとづいて。愛する女の頼みとあれば、恋仇の命を奪うのにためらいはない。しかし移ろいやすい女の心に翻弄されて、得られるはずと期待した心はついに得られず、あとには流された血だけが残るだろう。


「フェードル」は、恋の女神にかけられた呪いのために、義理の息子イポリットに恋心を抱くアテネの女王フェードルの破滅を扱う。禁じられた恋は悪の道。真実を隠そうとする企みが裏目に出て、死と悔恨だけが残る結末を迎えるだろう。

愛するがゆえに苦しみ、苦しむがゆえに憎悪が生じる、愛と憎しみの鏡像関係。愛と呼ばれる情念はこんなにも業の深いものなのだ。こんなにも愚かしいものなのだ。

4003251148フェードル;アンドロマック (岩波文庫)
ジャン ラシーヌ Jean Racine
岩波書店 1993-02

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