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zoom RSS 『シェリ』 コレット

<<   作成日時 : 2010/09/26 00:00   >>

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読み終えてあまりの美しさにため息がもれる。

公称49歳の元高級娼婦のレアは、25歳も年の離れた美青年のシェリを囲っている。小説は、シェリ(いとしい人)に結婚話がもちあがり、レアとの別れが決定的となった場面からはじまる。親子ほどにも年の離れた二人は睦まじく関係を続けて6年になる。お互いにとって相手は大事な存在だった、けれどもいつまでもこんな関係を続けていられるはずもない。はじめから長くはないと決まっていた恋愛だった。レアはシェリが去るのを表面上は冷ややかに受けいれるが実際には苦しむことになる。シェリもまた、若く美しい妻を娶ったものの彼女に満足できず、母親ほど年の離れたかつての愛人の面影に悩まされる。

二人は別れ別れで時を過ごし、やがて再会する。シェリもレアも、相手がどれほど自身のなかで重要な位置を占めていたのか、代わりの勤まる者などいない、そう自覚するものの、レアがいよいよ切羽詰って内心の昂じた思いを吐露した瞬間、シェリは彼女のもとから決定的に去ってしまう。何を考えているのか、わがものとなるのかわからない女のこころをついに手に入れたとき、シェリのレアへの恋は終わる。ジッドは本作を、コンスタンの『アドルフ』になぞらえて絶賛した。男の残酷な恋愛心理をどちらもよくあらわしている。

『シェリ』を書き終えたとき、コレットは50歳だった。作者とヒロインの相関が気になる。年を経て徐々に衰えていく美貌、肉体への恐怖と諦念。レアが自らを励ますために、自身をマダムと呼ぶ一節がよい。愛する男を失っても取り乱したりせずに、冷静に自身の置かれた状況について考察し、いま自分は苦しんでいるのだと呟く場面がよい。うわべは何事もないふうを装うも、実際にはシェリとの別れに深く傷ついているレア。痛手に耐え切れず外国旅行で気を紛らわせ、帰国して誰と旅行していたのかと問うシェリに、それが孤独な旅であったにも関わらずさも男連れの旅であったかのように振舞うレア。このあたりの駆け引き、男と女の心理を扱う箇所はとくに読みごたえがある。

4003258525シェリ (岩波文庫)
コレット Colette
岩波書店 1994-03

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コメント(2件)

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ごぶさたしております。
もうすぐ『シェリ』の映画がBunkamuraで上映されますね。
ミシェル・ファイファーがレアの役だそうです。
http://www.cetera.co.jp/cheri/

これを読んだとき、個人的には『痴人の愛』を思い出しました。
谷崎のような湿った退廃さはないですが。
proustplus
URL
2010/10/13 21:44
>proustplusさん

これはとてもよい恋愛小説ですね。年とった女の悲哀が書かれていて、それを表には出さんとするヒロインの気高さが素晴らしい。『痴人の愛』は男のマゾヒズムやフェティシズムが絡んでいて、ちょっと『シェリ』とは毛色が違う気がします。執着を口にした途端ひるがえる恋心という点から『アドルフ』と重なります。
epi
2010/10/15 19:19

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