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zoom RSS 『孤独と人生』 ショーペンハウアー

<<   作成日時 : 2010/11/24 00:00   >>

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実践的な幸福論。

ショーペンハウアーは人生を苦痛に満ちたものとみなし、いかにこうした苦痛を回避するかが人生を幸福に過ごす鍵になると述べる。苦痛や不快は他者によってもたらされることが多い。そのために、彼はなるべく孤独でいるよう読者に勧める。彼によれば幸福であるためには身体が健康であること、次に生活に困らない程度の収入があること、そして孤独でいること。なるほど、ある事柄から受ける印象はわれわれの精神や身体の状態によって変わるものであるのだから、これらがなるべく良好な状態でいられるよう心がけるのは大切な問題だろう。彼は言いきる、「健康な乞食のほうが、病める王よりも幸福である」と。頭痛や吐き気のするときにはどんなご馳走も気晴らしも役に立たない。本書で著者が述べる幸福論は、上のような実践的な内容となっている。邦訳タイトルはやや大仰だが、原題は「生活の知恵のためのアフォリズム」。

愚者は一時的な満足を追い求めるが、賢者は苦痛のないことを求める。人に生来備わった性格は先天的なもので、後天的に矯正できるものではない、それは自然であり、これとうまく付き合っていくことを学ぶべきだ。一人ひとりが異なる性格であるのを無視したポジティブ・シンキングを謳う本の胡散臭さは、この自然を無視しているのに起因している。自己の自然に背くことなく忠実にいられることこそ幸福ではないだろうか。

社交をなるべく避けるよう著者が勧めるのは、対人関係が快よりは不快をもたらすことが多いからだ。悪意ないつもりの発言によって顰蹙を買ってしまうこともあるだろうし、他者から不当に評価されて気落ちすることもあるだろう。著者は他人からいかに思われるか気にするなと長く頁を割いて述べている。他者からの評価を気にすることで自己の自然に背くことになったり、よく思われたいという欲望がわれわれに苦痛を強いる場合も多々ある。会社勤めなどしていればそんな局面は日常であり、そのたびに他者の目線を意識せずにはいられないのをむなしく思っている。鈍さからではなく強さから、他人からどう思われようと一向気にせずにいられればそれが最上だろう。それにしても他人の評価などあてにならないので、自分の価値の判定を他者に一任してしまうような真似は自我の不安定を招くだけだから絶対に避けなくてはいけない。他人が見るのは結果だけ、当人は過程をちゃんと知っているのだから。

本書の基調は消極的なもの。高望みをするのではなく今あるものの価値を見直せ。つねに用心を怠らず、降りかかるかもしれない災害について想像せよ。他人は他人であり、自己の模範とはなりえない。何よりも大事なのは、諦め、耐えることを学び、過度な欲望に身を焦がして煩悶することのないようにせよ。経済が停滞し、不況が常態化した現代の日本にあって示唆に富む内容であるだろう。社会で多く失望を味わった読者ほど、本書の内容は慰めとなるのではないか。

4560721130孤独と人生 (白水uブックス)
アルトゥール ショーペンハウアー Arthur Schopenhauer
白水社 2010-04

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ショーペンハウアーによる処世術は、プルーストのそれともよく似ている。
4560046646プルーストによる人生改善法
アラン・ド ボトン Alain De Botton
白水社 1999-01

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