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zoom RSS 『ワインズバーグ・オハイオ』 アンダソン

<<   作成日時 : 2010/12/25 00:00   >>

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架空の町で生きる人々の、22の物語。

オハイオ州はワインズバーグ・オハイオ。著者によって創造されたこの田舎町で暮らす人々の暮らしと内面を描く短篇集。そこには、自らの人生に空しさを覚える中年や、町を出た恋人との結婚の約束を待ち続ける女や、絵描きを夢見て旅立ったものの夢破れて帰郷した男たちがいる。18歳の新聞記者ジョージ・ウィラードを軸にして、彼ら町民たちの生活から、人が生きることの孤独や不安、失望が表現される。

20世紀初頭のアメリカの田舎町。現代と違ってさして娯楽があるわけでもない。人々は日々の暮らしに追われ、その合間に酒を飲んだり、恋愛をしたりして日常の煩わしさを束の間忘れる。そのような生活のなかにあるごく平凡な人々にも、背景にはそれなりの事情や事件があったり、決して他人には知られることのない秘密の思いが隠されていたりする。ウィラード青年は新聞記者という立場にあるから多くの人々と出会い、彼ら町民たちの人生の秘密を聞かされて、それが読者に提示される。

本作は内省的な小説だ。田舎町の閉塞感や、過ぎてしまった時間への悔恨が多く述べられ、それらの聞き役であるウィラード青年が最後に何のあてがあるわけでもないのに、やむにやまれぬ衝動に駆られてワインズバーグの町を旅立つところで終わる。一人の若者の成長物語的な一面もある小説だが、それとても、かつて彼のように何かを求めてワインズバーグを旅立った若者たちは数えきれないほどいたと述べられることで相対化されてしまう。

青年期に多くの人が感じるであろう感情――自分には特別な人生が用意されているのではないかという期待、漠然とした幸福の予感、未知の世界への憧れ――いまは田舎町でわびしい暮らしをしている、みすぼらしいなりの老人も、かつてはそんな感情に突き動かされた若者の一人であったのかもしれない。しかし町に留まり、運命と妥協し、安易な選択を重ねた末に、気づけば白髪の老人になってしまっていた。著者は残酷なまでに町の人々を突き放して、彼らの「グロテスク」さを強調する。主人公のウィラード青年ですら例外ではなく、彼は死にゆく母親から虎の子の大金を結局受け取れず、その存在すら知らずに町を出てしまい、秘密の主が死んだあとには壁に塗りこまれた大金が誰にも知られることなく眠り続けるだろう。その金があれば、ウィラード青年の門出の大きな助けとなっただろうに――。

年齢を重ねていき、ふと眠れない夜などに思うことがある。自分の人生はこれでよかったのかという問いと、こうなるしかなかっただろうという諦めと。重くたちこめる冬の雲のような、寂しく、そうしてものかなしい小説。

4061975730ワインズバーグ・オハイオ (講談社文芸文庫)
シャーウッド・アンダソン 小島 信夫
講談社 1997-06-10

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