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zoom RSS 『オイディプス王』 ソポクレス

<<   作成日時 : 2011/01/02 00:00   >>

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究極の悲劇。

おそらくはギリシア悲劇のなかでもっとも有名な作品であり、古来より傑作の誉れ高く、精神分析の用語にもなっているこの悲劇について筋を紹介するまでもないだろうが、一応。

かつてテバイはライオス王によって治められていた。彼はアポロン神による不吉な運命を告げられていた。妃イオカステとのあいだに子が生まれれば、いつの日かその子によってライオスは殺され、イオカステはその子の妻となり子をもうけるだろうと。父親殺しと近親相姦。あまりに忌まわしいこの神託を恐れたライオスは、生まれた男児のくるぶしを留め金で貫き、キタイロンの山深くに連れ去った。ここで子を殺せと召使に命じて。

時が経ち、ライオスは旅の途上で何者かに殺害される。テバイはスフィンクスの襲撃に遭い、解き難い謎を人々にかけ、答えられないテバイの人々の命を奪っていった。この混乱のさなかに、コリントス王の子でいまは旅の身であるオイディプスが当地を通りがかり、スフィンクスの謎を解き、テバイを救い、人々に推されてテバイ王となり、先王ライオスの妻イオカステを娶る。オイディプスは彼女とのあいだに4人の子をもうける。

その後、テバイに疫病が蔓延し、救いを求めてオイディプスはアポロン神にうかがう。神からくだされた神託によると、先王ライオス殺害の犯人の穢れによって国は呪われている、この者を排除せぬかぎりテバイは救われないという内容だった。なんとしてでも犯人を捜しだそうと躍起になるオイディプス。彼は神にも等しい力をもつ盲目の老予言者を呼んで犯人を告げるよう強いるが、予言の内容を恐れた彼は王にそれを告げない。先王ゆかりの者たちを集め、情報を収集するうちに、かつてライオスに下されたアポロンの神託がオイディプスの知るところとなる。実子による父親殺しと、近親相姦。

コリントスからの使者はオイディプスは王の実子ではないと告白するだろう。ライオスのかつての召使は王の命に背き赤子を殺せず他国の羊飼いに委ねたと告白するだろう。捨てられた子のくるぶしは留め金によって貫かれていたことも明るみにでるだろう(オイディプスという名は「腫足」の意味をもつ)。そしてライオスが殺された場所を知ったオイディプスに、かつて旅の途中に殺害した男の記憶がよみがえる。そう、予言は現実となっていた。オイディプスはそれと知らずに父親を殺し、それと知らずに母親と床を共にしていた。真実を知ったイオカステは重荷に耐え切れず自ら命を絶ち、オイディプスは両目を潰して放浪の身となる。劇の最後はコロス(合唱隊)によって次のように締めくくられる。
されば死すべき人の身は はるかにかの最期の日の見きわめを待て。
何らの苦しみにもあわずして この世のきわに至るまでは、
何びとをも幸福とは呼ぶなかれ。


「人間には運命の支配がすべて」。
知恵を絞り、抗い、あがき、逃れたと思っても、運命は必ずやその人をおのれの道へと招きよせるだろう。先王殺しの犯人探索が真実の究明に至り、真実が明るみに出たとき運命の変転が生起する。緊迫したミステリアスな展開に呑まれ、筋を知っていても真相が解明されたときには背筋が冷たくなり、劇の終わりには感動がある。アリストテレスは悲劇において重要な要素は恐れとあわれみ(いたましさ)であると述べた。ソポクレスによるこの悲劇はまさしくその両方を備えており、読み終えたとき読者は深いカタルシスを得るだろう。これを観劇したらどのような気分になるか。

運命のまえには権勢を誇る人とて塵に等しい。

4003210522オイディプス王 (岩波文庫)
ソポクレス 藤沢 令夫
岩波書店 1967-09-16

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このコメントに惹かれました→『緊迫したミステリアスな展開に呑まれ、筋を知っていても真相が解明されたときには背筋が冷たくなり、劇の終わりには感動がある』
ストーリーを知ってはいても、読んでいない名品ですね。読みます。
Dain
URL
2011/01/02 06:58
>Dainさん

コメントありがとうございます。
筋を知っていることが読まずに済む理由にはならないのだと教えられる読書でした。
epi
2011/01/03 15:19

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