epi の十年千冊。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『流刑の神々・精霊物語』 ハインリヒ・ハイネ

<<   作成日時 : 2011/02/14 00:00   >>

トラックバック 0 / コメント 0

新しき神と古き神々をめぐって。

キリスト教がその非寛容性をもってヨーロッパを席巻していったとき、古来から生きるゲルマン土着の神々はいかなる変容を強いられたか。新たなる宗教は土着の神々を奉じる民俗信仰を異教の野蛮な風習として一掃しようとし、多くの神々が悪魔として退けられた。古来より人々とともに生きてきた神々や精霊たちは土地を追われ、新たなる神にその座を奪われた。

『精霊物語』には多くの精霊や神々が登場する。水の精霊ウンディーネ、火の精霊サラマンダー、小人のコーボルトや妖精エルフェ。こうした精霊たちは古来から人々と共存し、ときに人々を助け、ときに悪戯をしてきた。彼らの登場する昔話、伝説は多く残り、それらを収集したのがグリム兄弟だ。この昔話および伝説にはパターンがあり、ひとつは人間と出会った精霊はおのれの素性を隠して人間と暮らすが、あるときそれを暴かれ、彼らは姿を消すというもの。もうひとつは精霊が人間を助けてくれていたのに、人間が誘惑に負けて彼らにちょっかいを出して結果怒りを買い、彼らは姿を消すというもの。これらはどちらも自然界の支配者が精霊たちから人間の側にシフトしていくのをよくあらわしている。前者のパターンは日本人にもなじみ深い「つるの恩返し」とよく似ている。昔話および伝説は、人間の自然支配を物語るものでもあるのだ。著者はこうした精霊(=民族神)たちが、人間に裏切られて人間のそばから去っていく姿を同情をこめて描いている。フーケーの『ウンディーネ』がその一例であるが、ここで紹介される人外と人間の恋愛物語などは要約ではなく全編を読んでみたいと思わせる魅力的な内容が多い。

『流刑の神々』は『精霊物語』から17年を経て書かれた。キリスト教の支配によって追放されたヘレニズムの神々が、時間を超えていまもなお生きているという伝説を集めたもので、ユピテルやアポロンやバッカスが登場する。彼らは死んだのではなく、いまも人間に姿を変えてどこかでひっそりと生きているのだろうか。これらの伝説はキリスト教の支配が決定的となったのちも民俗信仰は残っていることを示唆するのだろう。

収録する二篇のエッセーで著者はキリスト教の非寛容性を批判する。
むしろたいせつなことは、ヘレニズム自身を、つまりギリシア的感情と思考方法を守護し、ユダヤ教、つまりユダヤ的感情と思考方法の伸展をはばむことだったのである。問題は、ナザレの陰気な、やせ細った、反感覚的、超精神的なユダヤ教が世界を支配すべきか、それともヘレニズムの快活と美を愛する心と薫るがごとき生命の歓びが世界を支配すべきであるかということなのだ。


新しき神による古き神々の駆逐。去っていく古き神々への哀惜。民族信仰を排斥するために魔女の烙印を押されて処刑される者もいた。ヨーロッパの裏の歴史を述べて興味深い。訳者の丁寧な訳注および解説が本書理解の助けになる。

400324186X流刑の神々・精霊物語 (岩波文庫 赤 418-6)
ハインリッヒ・ハイネ 小澤 俊夫
岩波書店 1980-02-18

by G-Tools



エルフといえばディードリットを想起してしまうのは管理人がその世代の人間だからか。最高のヒロインだと思っている。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『流刑の神々・精霊物語』 ハインリヒ・ハイネ epi の十年千冊。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる