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zoom RSS 『作家の家』 F.プレモリ=ドルーレ

<<   作成日時 : 2011/04/08 00:00   >>

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作家たちの創作の現場を訪ねる。

高名な作家たちはどんな現場で創作していたのか知りたいと望むのはたぶん下世話な好奇心だろう。プルーストならば作品こそが作家の本質であると述べるだろう。しかしある作家の作品を読み、その作家に興味をもった場合にその作家のプライベートに踏み込みたくなるのは自然な感情で、本書には西欧作家21人の家の写真が、作家たちの言葉と生涯とともに紹介される。

本書で紹介される作家たちは、みな家に何らかの思い入れをもっている。創作活動と等しい熱意をもって家の改装にとりくんだフォークナー。ここは自分の家ではないと拒みながらもそこで暮らしたランペドゥーサ。ヘッセにせよカーレン・ブリクセンにせよヴァージニア・ウルフにせよ、みな孤独に一室に閉じこもり、そこで創作活動に打ち込んだ。写真では綺麗に整頓された机の上には紙の束が溢れペンが転がっていただろう。窓から入る午後の風がカーテンを揺らして壁に影をつくっただろう。そうした午後に、『響きと怒り』や『灯台へ』が書かれたのかもしれないと空想してみる。

家は住む人の分身でもある。インテリアで賑やかなコクトーの家や、オリエンタルな置物のあるダレルの家、質素なイエィツの家、ギリシャ彫像のあるユルスナールの家など、作家その人を表すようで面白い。個人的な好みをいえば、物の少ないシンプルな家よりも、木製の家具や本が乱雑に重なっている家のほうが人間味があってよいと思っている。

部屋にせよ本棚にせよ、不特定多数の人に公開するのに抵抗がある。それはその人自身を直截に伝えてしまうからで、だからこそ公開されたプライベートな空間に興味は尽きない。ネット上で閲覧できる部屋写真の公開サイトを見ては、とくに自分の部屋つくりに参考にするつもりもないのに、単なる興味本位から気づけば熱心に見、細部に目を凝らしている自分がいる。

本書を買ったのはヴァージニア・ウルフの家が載っていると知ったからだった。『ダロウェイ夫人』の出版で水洗トイレを作り、『波』の出版で電気を通せるようになった(1931年)サセックス州のモンクス・ハウス。姉が装飾を施した暖炉の写真が載っているが、この暖炉の上に夫と姉への遺書を置いて彼女はウーズ川に身を投げたのだった。夫レナードが熱心に手入れをした美しい庭を、夕暮れの光のなか、一人うつむきながら散歩する彼女の姿が見えるような気がする。

上で挙げたほかに紹介されている作家は、デュラス、ダヌンツィオ、カルロ・ドッシ、ジャン・ジオノ、ハムスン、ヘミングウェイ、セルマ・ラーゲルレーヴ、ピエール・ロティ、モラヴィア、ヴィタ・サクヴィル=ウェスト、ディラン・トーマス、マーク・トウェイン。表紙はブリクセンの家。

4890136282作家の家―創作の現場を訪ねて
フランチェスカ プレモリ=ドルーレ エリカ レナード マルグリット デュラス Francesca Premoli‐Droulers
西村書店 2009-02

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