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zoom RSS 『青い花』 ノヴァーリス

<<   作成日時 : 2011/05/06 00:00   >>

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あの夜、夢に見た花の名前は。

ドイツ・ロマン派を代表する詩人による小説。二部構成になっていて第一部は完結しているが第二部は著者の死によって未完に終わった。
青年ハインリヒが詩人としての自己を形成する遍歴を幻想的に述べる。ある夜、ハインリヒは青い花の夢を見る。その花のなかには美しい少女の顔がぼんやり浮かんでいた。大いなるもの、無限なるものの象徴であるこの花を追うハインリヒの旅は、同時に詩的なるものを問う探求の旅となる。

旅といって手に汗にぎる冒険が用意されているわけでは全然ない。少なくとも第一部ではハインリヒは母親の故郷へ向かうだけであり、その途上で幾人かの人たちと出会い、彼らとの対話がハインリヒを教化する。商人は伝説を語っていつか訪れる黄金時代を予感させ、老いた坑夫は欲望に囚われない哲人の生きかたを示す。母親の故郷では高名な詩人によって愛と詩に満ちた常春の楽園世界が告げられる。筋の合間に多く詩が配置され、また夢のなかの夢、メールヒェンの挿入などかなり自由な構成になっていて、それらが象徴的かつ夢幻的に述べられる。もはや小説内現実と幻想の境界は曖昧になり、両者が溶け合っていくかのような不思議な展開を見せて、小説は中断している。

愛と詩をめぐる幻想譚。多用な解釈を生みそうな本作を管理人はそう読んだ。青い花はハインリヒの旅立ちのきっかけであったが、この花のなかに見た少女こそ、彼が当初の旅の終着点、母親の故郷で出会いのちに妻として迎えるマティルデだった。彼と彼女の運命的な恋愛はこの上なくロマンチックなもの。二人は熱烈に愛し合い結ばれるが、第二部においてマティルデは死んでおり、ハインリヒは巡礼の途上にある。本作に収録されている遺稿によるとハインリヒはこのあとイタリアや東洋や死者の国などを旅し、最後にマティルデの復活に立ち会うことになっていたようだ。遺稿と、著者の友人であったルートヴィヒ・ティークによる解説を読むと、中断された第二部は極めて幻想、神秘の色の濃い物語になっただろうと推測される。ポエジーにおいてすべてはロマン化されるべきである、という著者の言葉があるが、それはすなわち物語のメールヒェン化を指すのだろう。

作中で述べられる黄金時代とはすべての存在がひとつに溶け合う世界だ(愛とはふたつの存在がひとつに溶け合うことだとハインリヒはマティルデに述べる)。かつてはそうであったのに、いまは失われた。この黄金時代の再来を夢みるようにして物語は展開する。全篇を満たすあまりに美しく、あまりに大胆な想像力が素晴らしく、それだけに未完なのが惜しまれる。


4003241215青い花 (岩波文庫)
ノヴァーリス 青山 隆夫
岩波書店 1989-08-16

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