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zoom RSS 『チリの地震』 ハインリヒ・フォン・クライスト

<<   作成日時 : 2011/05/12 00:00   >>

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運命に翻弄される人々。

表題作を含めて6篇の短篇と2篇のエッセーを収録する。
表題作の舞台は17世紀、大地震に見舞われたチリ王国の首都サンチャゴ。牢獄に繋がれていた男はこの地震で倒壊した建物から脱出し、愛する女を求めて市中をさまよう。やがて愛する女と再会し喜び合うのも束の間、災害に遭って混乱し暴徒と化した市民たちに襲われて恋人たちは無惨に殺される。パニックに陥った人間たちの狂気が招く悲劇。誤解を解こうと試みてももはや恐怖に混乱している市民たちは聞く耳をもたない。被害者たちの必死の声は届かない。ここでは災厄はあくまで人間の本性を剥き出しにさせるための装置であり、運命の変転の契機として機能する。

ほかの短篇においても運命の変転は扱われる。「聖ドミンゴ島の婚約」は植民地暴動に揺れるハイチを舞台に、愛し合っていながら誤解から死なねばならない恋人たちの物語が述べられる。「決闘」もまた、一人の女の名誉をめぐって二転三転する運命に翻弄される人間たちの物語だ。緊迫した展開は読者を飽きさせない。けれども先に述べた三篇はまさしく運命の物語であって、そこに登場する人物たちは筋の展開のために著者に制御される人形でしかなく、こうした筋の展開でもって読者を引っ張っていくスタイルの小説に良くも悪くも時代を感じるのは管理人ひとりとは思えない。人形であるから彼らの心理は斟酌されない。彼らは筋の展開に供されている。

上記で挙げた作品のほかに短篇としては「ロカルノの女乞食」「拾い子」「聖ツェツィーリエあるいは音楽の魔力」を収録。いわゆる短篇小説を著者は生涯この6篇しか書かなかった(中篇として「ミヒャエル・コールハース」「O侯爵夫人」がある)。そのほかに「話をしながらだんだんに考えを仕上げてゆくこと」「マリオネット芝居について」の2篇のエッセーを収録。

430946162Xチリの地震―クライスト短篇集 (河出文庫)
ハインリヒ フォン・クライスト Heinrich von Kleist
河出書房新社 1996-10

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