『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス

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「物語るために生れてきた」と自ら語るだけあって、いやあガルシア=マルケスおそるべし。たいへんなエンターテイナーであるなあ。

無から開拓され無へと還るマコンド村と、その開拓者一族の者たちの愛と孤独の歴史を描く百年の物語。
壮大なスケールと「魔術的リアリズム」と呼ばれるイメージの奔流に圧倒されながら、小説を読むことの愉しさを存分に堪能した。この物語世界は他メディアには変換不可能だろう。黄色い花が降りそそぐ葬儀の日、風にさらわれ永遠に姿を消した美女、3000人の死体を乗せてひた走る200両編成の列車、時に侵食されやがて崩壊する家などなど、奔放なイメージの氾濫とぐいぐい先へと引っ張っていくストーリー展開。とにかく本当に面白い小説で夢中で読み耽ってしまった。
もっと早く読んでおけばよかったという後悔と、こんなに面白いならまだ読まないで先へ楽しみをとっておけばよかったという後悔と。読み終えて矛盾した感情を同時に覚えたのも久しぶりだ。

魅力的な一族の者たちが一人また一人と時の流れのうちに消えていき、隆盛を極めたマコンドが避けようのない滅びの運命へと向かう終盤は読むのが辛い。死ぬな、消えるな、と何度思っただろうか。

これは素晴らしい読書だった。
やっぱり小説はいいなあ…としみじみ。


なお、本書は「ガルシア=マルケス全小説」の一冊で新装版ながら訳文は1999年の旧版そのままだそうです。
鼓直 訳(新潮社)

4105090119百年の孤独
ガブリエル ガルシア=マルケス Gabriel Garc´ia M´arquez 鼓 直
新潮社 2006-12

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この記事へのコメント

摩訶不思議
2007年01月06日 22:25
はじめまして。なかなか充実した興味深いblogですね。
私も最近『百年の孤独』を読む機会がありました。
私のblogで予告していた「運命の書」とはかの有名なミラン・クンデラの『冗談』という作品です。みすず書房から出版されております。
先延ばしになったのは、この作品があまりに偉大であるため、説明不可能であるからです。ぜひお読みになって下さい。
なお、私はドストエフスキー、ニーチェ、ハイデッガーは今後読まないことにしております。元来は大好きだったのですが、考えるところがありまして。
2007年01月06日 23:20
>摩訶不思議さん

コメントありがとうございます。
件の一冊は「冗談」でしたか。わたしも少し前に読みました。たしか、まずい感想文を書いています。
些細な冗談から人生を翻弄される男の話と読みました。この世のすべての出来事、人の生死のような問題すら冗談として片付けてしまえるこの世界で生きていかざるを得ない人間という存在の寄る辺なさに慄然とした記憶があります。そしてあらゆる行為の償いはなされないということにも。

ニーチェは少ーし、ハイデッガーに関しては何も知りません。今後も、よろしくお願いします。
2007年01月08日 03:55
epiさん、こんばんはっ。さっそくお読みになったのですね。そうですか、もっと早く読めばという思いだけでなく、先にとっておけばという思いも。実は私たち、この本はかならず再読しようと思っていて、あるていど年齢を重ね、経験を重ねてからと考えていたんですよね。それがこの再発刊でしょう。そういうことなら今読むしかないと思っていたんですが、やっぱりもうちょっと先に延ばして、前に読んだ時とはまったく違った味わいに驚く喜びを増させたほうがいいかなあ。なんか中途半端な時期に再読ってもったいない気もしますよね。うーんうーん、どうしよう(笑)
2007年01月08日 21:40
>すみさん、にえさん

こんばんは。今年もよろしくお願いします。

>さっそくお読みになったのですね。

じつは今年中に読めばいいやと思っていたのですが、何気なく最初のページを開いたら止まらなくなってしまって。本当に面白かったです(^^)

>再読

悩ましい状態なのですね。
「年齢を重ね、経験を重ねてから」というのは素敵な読書だと思います。本はいつまでも黙って待っていてくれるし、初読時には初読時の、再読、三読めにはそれぞれの発見や面白さがあると思います。
でも、読みたいときに読むのが一番! とも思います。人生は短くて、明日何が起こるかも分かりませんから(大袈裟)
(続きます)
2007年01月08日 21:42
>すみさん、にえさん

(続きです)
個人的な話になってしまうのですが、わたしはトゥルゲーネフの「初恋」が大好きなのに、あまり読み返したくないんです。たびたび読むと慣れちゃって感動できなくなる気がして。
でも、たとえばドストエフスキーの長編なんかは飽きずに何度読み返してもその都度感動するので、すぐれた本なら何度読んでも悪い意味で慣れるということはないのかもしれない…と思ったり。

長くなってしまいました。今年もすてきな記事を楽しみにしています。お二人の記事を読んで「キングとジョーカー」を購入しました。読むのが楽しみです^^
M
2007年01月09日 12:55
初めまして。
ぼくが読んだ「百年の孤独」は、1972年版で、25年以上前の話です。降り続く雨の中、窓をあけると魚が泳いで入ってくるシーン、伝染性の不眠症の中で、過去を占うようになるシーンとか、今でも覚えています。
荒唐無稽であるなかに詩的なシーンがいくつもありました。
epiさんの記事でまた蘇りました。読書の読書もまた一種の読書なのでしょう。
この「百年の孤独」のエピソードを使って書いた記事がぼくにあります。時間のあるときに読みに来てください。記憶が確かでないので、引用は違っているかもしれませんが。(TBできませんでした。)
http://freezing.blog62.fc2.com/blog-entry-67.html
2007年01月09日 23:53
>Mさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

>読書の読書もまた一種の読書なのでしょう。

このお言葉ですが、少し考えてみましたが、今のわたしにはまだ何ともお返事できそうにありません。このお言葉は種としてわたしの土壌に撒いて、しばらく様子を見ようと思います。気分で答えられるような軽いお言葉ではないと判断しました結論です。

>記憶が確かでないので

それは、Mさんが25年間、「百年の孤独」と付き合ってきたことの結果ではないかと拝察いたします。ひとは読んだ本の言葉を生きるうちに、書かれていた言葉を自分の一部として吸収していくのでしょう。
松浦寿輝さんによると、吉田健一はボードレールを「間違って」諳んじていたそうです。彼が詩人と生きるうちに、詩人の言葉を自分のものとしていったのでしょう。
わたしもそのように書物と付き合いたくて、今夜も本を読んでいます。
今後も、よろしくお願いします。
Traceeq
2017年11月19日 06:58
ハホヘメナヘメ フタミハナメネヘテ.
ハ黑��裲鮱 竟四角数字1褪-�葢韆褊韃 鶯魵 砒� �ⅲ蓖韭魵 � �褞襃�瑣 � 鮏濵� �褥四角数字1!
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