『長編小説と散文集』 ローベルト・ヴァルザー

小さき者へ。 「ローベルト・ヴァルザー作品集」の3巻。「ヤーコプ・フォン・グンテン」と「フリッツ・コハーの作文集」の二篇を収録する。 「ヤーコプ・フォン・グンテン」の語り手ヤーコプ少年は「召使い学校」ベンヤメンタ学院の寄宿生だ。学院の生徒たちが学ぶことは少ない。「男子はいかにふるまうべきか」、全授業はこの問題をめぐって繰り返…
コメント:1

続きを読むread more

『ヴァルザーの詩と小品』 飯吉光夫編訳

恍惚と不安。 再読。ローベルト・ヴァルザーの詩と散文小品を、彼の兄カールの挿絵付きで紹介する。 ヴァルザーの小説にも登場する兄カール・ヴァルザーとはいかなる人物だったか。彼はローベルトより1年早く、1877年にスイスのビール市に生まれた。年が近いせいもあってローベルトにとってもっとも近しいきょうだいだった。シュトゥットガルト…
コメント:2

続きを読むread more

『パウル・ツェラン詩文集』 飯吉光夫 編・訳

まだ歌える歌がある。 再読。編訳者による著書『パウル・ツェラン ことばの光跡』を読めばどうしてもツェランの詩を読みたくなる。彼の詩は暗く、痛みを誘い、独白のようで、読むのに集中力を求められるため気軽く向かう心にはなれないのだけれど。 本書冒頭に収録の「死のフーガ」はツェランの、そして戦後ドイツ詩の代表作とされ、作者は断りを入…
コメント:0

続きを読むread more

『パウル・ツェラン ことばの光跡』 飯吉光夫

ツェラン詩のガイドとして。 戦後世界最高の詩人といわれるパウル・ツェラン。彼の詩を日本にいち早く紹介したツェラン研究の第一人者による、約半世紀に亘るツェランをめぐる論考。さまざまな媒体に書かれた文章の集成であり、専門的な文章とエッセイふうの文章が混ざっていて、ツェランに多少興味があるという程度の一般読者が手に取ったとしても、十分に…
コメント:0

続きを読むread more

『名づけえぬもの』 サミュエル・ベケット

まだ終わらぬために。 見渡す限り真っ暗な空間に語り手はいる。ここはどこなのか。現実なのか夢なのか死後の世界なのか。彼によると、自分には頭があるとは思えない、口も目もあるとは感じない(なのに真っ暗だという)。語り手は何もわからないままにしゃべりはじめる。わからないけれども、とりあえずはわかっていることについて。その、わかっていること…
コメント:0

続きを読むread more

『マロウンは死ぬ』 サミュエル・ベケット

死の床に横たわりて。 本作は、間もない死を予感しているマロウンという老人がどこともわからぬ部屋で書いている手記の結構になっている。彼はノートに三種類のことを書く。現在の自分の状況と、財産目録と、そして物語。この三つの内容に共通するのはいわば生の報告書としての機能だ。自分の状況の報告と財産目録はどちらも間もなく死ぬだろう人間の生の証…
コメント:0

続きを読むread more

『モロイ』 サミュエル・ベケット

果てしない物語。 再読。2部構成になっている。1部はモロイという足の不自由な老人が語る。記憶力が欠ける彼の語りはとりとめない。いつか溝に落ちてはまりこんだのだがどうやら誰かに助けられて、いまは死んだ母親の部屋にいるという。彼女の死について詳細は語れない。というか、わからない。いつ死んだのか、埋葬はもう済んだのか、そもそもどうして自…
コメント:0

続きを読むread more

『ゴドーを待ちながら』 サミュエル・ベケット

明日は、明日こそは。 夕暮れの田舎道、一本の木の下に二人の浮浪者、エストラゴンとヴラジーミルが立っている。彼らは待っていた。今日、ここに来る約束になっているゴドーという人物を。丸一日を待つのに費やし、けれどもゴドーが姿を見せないまま、もうすぐ今日は終わろうとしている。するとそこに、知恵遅れと思しき従者の首を綱で縛った男が登場する。…
コメント:0

続きを読むread more

『釈尊の生涯』 中村元

生身の釈尊伝。 「この書は仏伝でもなければ、仏伝の研究でもない」と著者は序文に書いている。いわゆる仏伝のうちには神話的な要素が多く、釈尊が説いたとされている教えのうちにも後世による付加仮託になるものが非常に多い。こういう後代の要素をなるたけ排除して、歴史的人物としての釈尊の生涯を追求する。 釈尊(ゴータマ・ブッダ)は世紀前4…
コメント:0

続きを読むread more

『ブッダのことば』 中村元訳

最古の仏典。 本書『スッタニパータ』は、釈尊と、彼に教えを乞う修行者たちとの対話から成っている。中国、日本の仏教には殆ど知られなかったが、本書は数多ある仏典のなかで最古のものであり、釈尊の言葉にもっとも近い詩句を集成しているとされる。登場する修行者たちは屋外――樹下や岩窟――で暮らしており、寺院が作られる以前の時期であることを伝え…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『ブッダの人と思想』 中村元・田辺祥二

目覚めた人。 12章に分けて釈尊の生涯と教説を紹介する。釈尊の説いた教えを簡潔にまとめており、原始仏教の入門書として適している。 釈尊の人間観は「欲望を中核(コア)とした人間観」だった。人間にはみな生存への欲望があり、その欲望が各人の世界像を歪ませている。欲望を抑えることによってその歪みを正そうというのが釈尊の教えの根本にあ…
コメント:0

続きを読むread more

『原始仏典』 中村元

嘆くをやめよ。 仏教の開祖である釈尊(ゴータマ・ブッダ)の生涯、彼の教説、その後世における発展等をコンパクトにまとめた一冊。著者は『スッタニパータ』等の原始仏教の経典から現代に生きるわれわれにとって無縁でない部分を引き、平明に解説する。原始仏教とは、釈尊の死から約100年後に仏教の出家集団が戒律の解釈をめぐって分裂する以前の時期を…
コメント:0

続きを読むread more

『よく生きる』 岩田靖夫

生きることを学ぶ。 著者が行った講演等のなかから、「よく生きる」という問題に関する内容をまとめた一冊。この問題を、著者は哲学に携わって以来一貫して考え続けてきたという。「幸福」「他者」「神」「社会」の四点について古今東西の哲学者、思想家を引用しながら、「よく生きる」とはいかなる生なのかを考察する。本記事では主として「幸福」と「他者…
トラックバック:1
コメント:1

続きを読むread more

『ヨーロッパ思想入門』 岩田靖夫

自由、平等、博愛。 ギリシア思想とヘブライの信仰。このふたつが西欧思想の土台であると著者は見る。タレスに始まり、ソクラテス、プラトン、アリストテレスへと続くギリシア思想の特徴とは何か。それは自由と平等の自覚であり、物事の真実を見極めようとする探究心だった。彼らはそれらを備えた自分たちの民族を誇り、他民族は「バルバロイ」と呼んで軽蔑…
コメント:0

続きを読むread more

『イラスト西洋哲学史』 小阪修平

意識の進化史。 紀元前6世紀。中国では孔子が儒教と呼ばれることになる思想を説き、インドではゴータマ・ブッダが仏教と呼ばれることになる思想を説いた。そしてギリシアとその周辺地域ではタレスによってギリシア哲学が生まれる。 哲学の始祖とされるミレトスの人タレスは一種の賢人で、日蝕を予言した、政治に関わった、オリーブ油を搾る機械の投…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『反哲学史』 木田元

思想の変遷。 著者が提示する「反哲学」とは、哲学の解体、反省という意味がある。反哲学を粗描したのは19世紀のニーチェであり、ハイデガーがこれを継承する。では哲学とは一体何であるのか。哲学とはどの文化圏にも、どの時代にもある普遍的な知の様式ではない。哲学とは西欧世界に独特な思考様式である。「インド哲学」「中国哲学」と呼ばれる思考様式…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『反哲学入門』 木田元

哲学から反哲学へ。 著者はまえがきで、「哲学というのは西洋という文化圏に特有の不自然なものの考え方だ」と述べる。哲学と呼ばれるものの考え方は、西洋以外の国には見当たらない。この独特なものの考え方である哲学を批判し、乗り越えようとする試みを著者は「反哲学」と呼ぶ。この語には、19世紀に登場したニーチェによって始められ、のちハイデガー…
コメント:0

続きを読むread more

『災害がほんとうに襲った時』 中井久夫

災害の現場で。 2011年3月11日は悲しくも人々に長く記憶される日となった。日本ではこの16年前にも大地震が発生している。阪神淡路大震災だ。この震災で被災した精神科医が関与観察した50日間の記録が主として収録されている。現場体験者の文章から、非常時のみならず平時にも有効な行動の指針を学ぶ。 災害直後、人々は混乱する。災害初…
コメント:0

続きを読むread more

『晩夏』 シュティフター

もう一度だけ夏を。 若き語り手は地質学の調査をしている。ある日、雨宿りのため、丘のうえに建つ、壁に薔薇を絡ませた美しい邸を訪れると、老齢の主人が出てくる。邸のなかは芸術的な内装が施され、すぐれた美術品が数多くコレクションされていた。学問や芸術、園芸や農地管理についての話を聞くうちに、語り手は主人の知識と洗練された趣味に感服し、善良…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『ブリギッタ・森の泉 他一篇』 シュティフター

大人の文学。 シュティフター初期の作品「荒野の村」「ブリギッタ」、晩年の作品「森の泉」を収録する。 「荒野の村」は「物悲しいほど美しい」荒野で暮らす少年の物語。自然界に漂う霊気を吸って生きているような選ばれた少年は、「勉強して一人前になるため」に家族と別れて「遠い国」へ旅立ち、長い巡礼ののち立派な青年になって帰ってくる。両親…
コメント:0

続きを読むread more