テーマ:その他

『デパートを発明した夫婦』 鹿島茂

欲望と消費社会。 19世紀前半のフランスでは道路が整備されておらず、馬車は一部の富裕層のみが利用できるものだったので、庶民が買い物できる場所は近所の個人商店しかなかった。個人商店には暗黙の規則があって、客は一歩店に足を踏み入れたが最後、何も買わずに出て行くということはできなかった。店内は暗く、商品の展示はなく(客が望みをいうと店員…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『明日は舞踏会』 鹿島茂

夢見る少女じゃいられない。 数年ぶりに再読。19世紀フランスの小説を読んでいて妙に思うのは、『ゴリオ爺さん』のラスティニャックにせよ、『感情教育』のフレデリック・モローにせよ、『赤と黒』のジュリアンにせよ、なぜ彼らは同世代の少女とは恋愛をせずに人妻とするのか、ということだ。そして少女たちはなぜ、同世代の若者とではなくかなり年長の―…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『私の幸福論』 福田恆存

運命愛。 昭和30年から翌年にかけて、若い女性向けの雑誌に連載していた幸福論。職業、恋愛、性、結婚、家庭、母性など、当時の女性が抱えていた問題(いまもさして変化ないかもしれない)について現実的に意見を述べていく。著者は幸福論について、「不幸にたへる術」と考えていた(中野翠さんによる解説)。生きることはたやすくない。何も意欲せず、意…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『幸福論』 アラン

喜ばしき知恵。 幾度目かの再読。幸福論としてはバートランド・ラッセルのと並んで定番だろうか。 幸福な生のためには意志の力によって情念を克服することが肝要である、アランは繰り返しそう述べる。「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」。精神を成り行きにまかせて放っておけば、やがて人は憂鬱に陥るだろう。雨が降っているから、胃…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『幻想植物園』 巖谷國士

彼女のいる風景。 36の花と木をめぐるエッセイ。幼いころから花や木と会話を交わし、庭に小さな花壇を作って植物を育ててきたという著者が、回想をまじえながら植物への愛を述べる。花や木は著者にとっては女性であるようで、彼女という代名詞を用いているのに微笑ましくなる(グランヴィルやウォルター・クレインによる擬人化された花々も連想される)。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『森と芸術』 巖谷國士

われわれは森から来た。 本書は2011年におこなわれた「森と芸術」展の図録だが、「一冊の書物」として独立して読める結構になっている。博覧強記を誇るそぶりをまったく見せずに、優しく平明に、森と人間の歴史を解説する著者の、ナルシシズムと無縁のおおらかさが好ましい。 2万年ほどまえ、氷河の南下により地球の気温は急激に下がり、ユーラ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『シュルレアリスムとは何か』 巖谷國士

通底器。 20世紀初頭に登場したシュルレアリスムという思想と運動について、「メルヘン」と「ユートピア」を絡めつつ論じた講義を書籍化したもの(本記事では第一部「シュルレアリスム」のみ扱い、第二部「メルヘン」および第三部「ユートピア」にはふれない)。 今日、われわれは現実離れしたもの、突飛なものに関して「シュールだねえ」という反…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『カミュ 『よそもの』 きみの友だち』 野崎歓

幸福な生。 「異邦人」のタイトルはやや大仰だとして、より身近な「よそもの」という新たなタイトルを与え、カミュのこの小説を読みとく。『異邦人』の魅力は、主人公ムルソーの、感情が欠如したような語りにあるだろう。「きょうママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私にはわからない」。あまりにも有名な窪田啓作訳の冒頭は野崎訳ではこう…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『行動分析学入門』 杉山尚子

行動から人間を見る。 行動分析学は1930年代に米国の心理学者B・F・スキナーによって創始された心理学の一体系で、人間や動物の行動全般を分析する。ここでいう「分析」とは原因を明らかにするというほどの意味だ。「人間や人間以外の動物の行動には、それをさせる原因があるのであり、その原因を解明し、行動に関する法則を見いだそうとする科学が行…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『ニーチェ・セレクション』 渡邊二郎編

ニーチェ思想のアンソロジー。 ゲーテはこう言った。「人格であることは地上の子らの最高の幸福である」。ニーチェはこう言った。「人間とは克服されるべきなにものかである」。自己実現と自己超克。二人のあいだには100年の懸隔がある。 本書は6部構成。まずニーチェの生涯と思想の紹介。そのあとニーチェ思想がテーマごとに編まれる。「人生と…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『道徳の系譜学』 ニーチェ

道徳の価値。 『善悪の彼岸』は『ツァラトゥストラ』の注釈書として書かれた。その『善悪の彼岸』の補遺として書かれたのが本書『道徳の系譜学』だ。「論文など書かない」といったニーチェにしては珍しく断章形式ではなく論文形式で書かれており論旨を追いやすい。収録されているのは「「善と悪」と「良いと悪い」」、「「罪」「疚しい良心」およびこれに関…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『善悪の彼岸』 ニーチェ

苦難の価値。 猛々しく生きよ。ニーチェの思想を要約するとその一言に尽きる。彼にとって生とは、「本質において、他者や弱者をわがものとして、傷つけ、制圧すること」であり、「抑圧すること、過酷になること」であり、「自分の形式を(他者に)強要すること」、「(他者を)自己に同化させること」、「他者を搾取すること」だった。弱肉強食の世界観。生…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『パウル・ツェラン ことばの光跡』 飯吉光夫

ツェラン詩のガイドとして。 戦後世界最高の詩人といわれるパウル・ツェラン。彼の詩を日本にいち早く紹介したツェラン研究の第一人者による、約半世紀に亘るツェランをめぐる論考。さまざまな媒体に書かれた文章の集成であり、専門的な文章とエッセイふうの文章が混ざっていて、ツェランに多少興味があるという程度の一般読者が手に取ったとしても、十分に…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『釈尊の生涯』 中村元

生身の釈尊伝。 「この書は仏伝でもなければ、仏伝の研究でもない」と著者は序文に書いている。いわゆる仏伝のうちには神話的な要素が多く、釈尊が説いたとされている教えのうちにも後世による付加仮託になるものが非常に多い。こういう後代の要素をなるたけ排除して、歴史的人物としての釈尊の生涯を追求する。 釈尊(ゴータマ・ブッダ)は世紀前4…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『ブッダのことば』 中村元訳

最古の仏典。 本書『スッタニパータ』は、釈尊と、彼に教えを乞う修行者たちとの対話から成っている。中国、日本の仏教には殆ど知られなかったが、本書は数多ある仏典のなかで最古のものであり、釈尊の言葉にもっとも近い詩句を集成しているとされる。登場する修行者たちは屋外――樹下や岩窟――で暮らしており、寺院が作られる以前の時期であることを伝え…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『ブッダの人と思想』 中村元・田辺祥二

目覚めた人。 12章に分けて釈尊の生涯と教説を紹介する。釈尊の説いた教えを簡潔にまとめており、原始仏教の入門書として適している。 釈尊の人間観は「欲望を中核(コア)とした人間観」だった。人間にはみな生存への欲望があり、その欲望が各人の世界像を歪ませている。欲望を抑えることによってその歪みを正そうというのが釈尊の教えの根本にあ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『原始仏典』 中村元

嘆くをやめよ。 仏教の開祖である釈尊(ゴータマ・ブッダ)の生涯、彼の教説、その後世における発展等をコンパクトにまとめた一冊。著者は『スッタニパータ』等の原始仏教の経典から現代に生きるわれわれにとって無縁でない部分を引き、平明に解説する。原始仏教とは、釈尊の死から約100年後に仏教の出家集団が戒律の解釈をめぐって分裂する以前の時期を…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『よく生きる』 岩田靖夫

生きることを学ぶ。 著者が行った講演等のなかから、「よく生きる」という問題に関する内容をまとめた一冊。この問題を、著者は哲学に携わって以来一貫して考え続けてきたという。「幸福」「他者」「神」「社会」の四点について古今東西の哲学者、思想家を引用しながら、「よく生きる」とはいかなる生なのかを考察する。本記事では主として「幸福」と「他者…
トラックバック:1
コメント:1

続きを読むread more

『ヨーロッパ思想入門』 岩田靖夫

自由、平等、博愛。 ギリシア思想とヘブライの信仰。このふたつが西欧思想の土台であると著者は見る。タレスに始まり、ソクラテス、プラトン、アリストテレスへと続くギリシア思想の特徴とは何か。それは自由と平等の自覚であり、物事の真実を見極めようとする探究心だった。彼らはそれらを備えた自分たちの民族を誇り、他民族は「バルバロイ」と呼んで軽蔑…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『イラスト西洋哲学史』 小阪修平

意識の進化史。 紀元前6世紀。中国では孔子が儒教と呼ばれることになる思想を説き、インドではゴータマ・ブッダが仏教と呼ばれることになる思想を説いた。そしてギリシアとその周辺地域ではタレスによってギリシア哲学が生まれる。 哲学の始祖とされるミレトスの人タレスは一種の賢人で、日蝕を予言した、政治に関わった、オリーブ油を搾る機械の投…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『反哲学史』 木田元

思想の変遷。 著者が提示する「反哲学」とは、哲学の解体、反省という意味がある。反哲学を粗描したのは19世紀のニーチェであり、ハイデガーがこれを継承する。では哲学とは一体何であるのか。哲学とはどの文化圏にも、どの時代にもある普遍的な知の様式ではない。哲学とは西欧世界に独特な思考様式である。「インド哲学」「中国哲学」と呼ばれる思考様式…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『反哲学入門』 木田元

哲学から反哲学へ。 著者はまえがきで、「哲学というのは西洋という文化圏に特有の不自然なものの考え方だ」と述べる。哲学と呼ばれるものの考え方は、西洋以外の国には見当たらない。この独特なものの考え方である哲学を批判し、乗り越えようとする試みを著者は「反哲学」と呼ぶ。この語には、19世紀に登場したニーチェによって始められ、のちハイデガー…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『災害がほんとうに襲った時』 中井久夫

災害の現場で。 2011年3月11日は悲しくも人々に長く記憶される日となった。日本ではこの16年前にも大地震が発生している。阪神淡路大震災だ。この震災で被災した精神科医が関与観察した50日間の記録が主として収録されている。現場体験者の文章から、非常時のみならず平時にも有効な行動の指針を学ぶ。 災害直後、人々は混乱する。災害初…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『詩人たちの世紀』 新倉俊一

革新の詩学。 エズラ・パウンドと西脇順三郎。モダニズムの詩人二人を「合わせ鏡」として、20世紀前半の現代詩運動を振り返る。 1885年にアイダホ州で生れたパウンドは、23歳でアメリカを出てヴェニス経由でロンドンに入る。当時の詩壇の大御所イェイツと知り合い、彼の家で開かれる「月曜会」の常連となるが、俳句からヒントを得た「事物を…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more

『孤独な散歩者の夢想』 ルソー

夢を歩く。 1762年、パリの高等法院は『エミール』の内容にキリスト教の教義を批判した箇所があると裁き、同書はフランス政府から禁書処分を受け、著者ルソーに逮捕状が出される。追手を逃れて各地を転々とするなかで、ルソーはこの背後に陰謀同盟があり、みなが自分を迫害しようとしているのだと妄想するようになる。手を回しているのは論敵ヴォルテー…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more

『「伝える」ことと「伝わる」こと』 中井久夫

冷静とぬくもり。 4部構成。主としてⅠ部では統合失調症治療について、Ⅱ部では絵画療法について、Ⅲ部では心身の健康について、Ⅳ部では書くことについての文章を収録する。コレクションの3巻もそうだったが、本書の収録内容もバラエティに富んでいる。初出は1970年代から2011年までと幅広いが大半は1980年代。 専門的な文章が多くを…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『「思春期を考える」ことについて』 中井久夫

病いと社会。 四部構成。主としてⅠ部は思春期における精神病や教育問題について、Ⅱ部は妄想や軽症うつ病、慢性アルコール中毒の治療について、Ⅲ部は病跡学について、Ⅳ部はサリヴァンの生涯と業績について、などの文章を収録する。書かれたのは70年代から80年代前半にかけて。この巻はコレクションの前二巻と比較してよりバラエティに富んだ内容にな…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『「つながり」の精神病理』 中井久夫

深淵の家族。 三部構成。主として、Ⅰ部では患者と家族の関係について、Ⅱ部では少年期から老年期までの精神病理について、Ⅲ部では著者自身と精神科医療との関係についての文章が収録されている。書かれたのは80年代から95年の震災以前。 単純な知的好奇心以外に、なぜ精神病理について読むのかと問われたなら、本書中の著者の言葉がそのまま答…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

『世に棲む患者』 中井久夫

病いとともに生きる。 精神科医が臨床を通じて得た知見を述べる。三部構成になっており、主としてⅠ部では統合失調症患者の治療周辺について、Ⅱ部では統合失調症、慢性アルコール中毒症、妄想症、境界例、強迫症等について、Ⅲ部では医師と患者との関係について。 Ⅰ部は方法論として読める。精神病の治療とは、患者が発病以前の状態に戻ることでは…
トラックバック:0
コメント:2

続きを読むread more

『夜と霧 新版』 ヴィクトール・E・フランクル

それでも生にしかりという。 再読。内容について改めて紹介するまでもないだろう、ロングセラーの一冊。ナチスの強制収容所から生還した精神科医が自身の体験と観察を述べる。著者ははじめアウシュビッツに収容され、のちテュルクハイムに移送、そこでアメリカ軍によって解放されている。 ナチスの強制収容所がいかなる場所であったか、今日ならば多…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more