テーマ:日本文学

『砂の女』 安部公房

囚われの男。 昭和30年の夏。どこか海沿いの集落に、昆虫採集を目的にした一人の男が現れる。彼は、砂地にこそ、自分が求める新種のハンミョウがいると考えてこの集落にやって来たのだった。しかし成果は挙がらず、やがて日が暮れる。男は地元の老人に声をかける。どこか泊まれるところはないか。誰かに口をきいてやってもいい、老人はそう言い、男を案内…
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『死の島』 福永武彦

福永武彦の集大成。 敗戦が人々の記憶から薄れつつある昭和20年代末の東京。小説家志望の若き編集者、相馬鼎は、美術展で一枚の絵に惹きつけられる。この世の終わりを暗示するかのような暗い島の絵。画家の名は萌木素子とあった。相馬が出版物の装丁を依頼する目的でこの女性画家を訪問すると、そこには彼女と同居しているという若い女もいて、彼女は相見…
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『万延元年のフットボール』 大江健三郎

地と血。 はじめに語り手がふたつの困難に直面していることが述べられる。親友の異常な方法での自殺と、生まれた子どもの障害。語り手は子どもを施設に預けるとアルコール依存症の妻を連れ、アメリカから帰国した弟の鷹四に誘われて故郷の愛媛へ帰郷する。兄と弟のほかの家族はすでにこの世にない。到着すると故郷は以前語り手が知っていた時分とは様子を変…
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『個人的な体験』 大江健三郎

新生。 鳥(バード)は27歳の予備校教師。近く出産予定の妻は入院している。もうすぐ父親になる彼にはひそかな願望があった。アフリカへ行くこと。小説は彼が書店でアフリカの地図を購入する場面からはじまる。彼は妻と、もうすぐ生まれる子どもへの情愛をもてずにいる。状況を確認するために病院へかける電話は義務的だ。やがて妻は予定通り出産する。産…
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『死者の奢り・飼育』 大江健三郎

壁。 「死者の奢り」の語り手は、解剖に使用する死体を古い水槽から新しい水槽へ移動させるアルバイトに応募した大学生だ。死体処理室に勤務するベテランの管理人と、語り手と同じくアルバイトの女子学生の3人で、朝から夕方まで、重い死体を担架に乗せて運ぶ肉体労働に従事する。語り手は水槽に浮かぶ死者たちの声が聞こえるようで、彼らに奇妙な親近感―…
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『日本文化私観』 坂口安吾

生きろ。 坂口安吾による日本人論、文学論、政治論を主として収録している。安吾の思想はいたって実利的かつ真正直なものであり、解説の川本三郎氏が指摘しているように「健康的」だ。「日本文化私観」の有名な一説、「京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困るのだ」には、現実的な彼の思想が端的に表れている(「問題は、伝統…
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『望郷と海』 石原吉郎

沈黙の底から。 シベリアで8年に及ぶ収容所生活を送った詩人のエッセイ集。著者は1945年にソ連軍に逮捕され、1949年に中央アジア軍管区軍法会議の臨時法廷で「戦争犯罪人」として裁かれる。判決は重労働25年。行き先は、ソ連の囚人たちがもっとも恐れるバム(バイカル―アムール鉄道沿線)の密林だった。氷点下40度にもなる過酷な気候の下、森…
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