『言葉』 J-P・サルトル

読む、書く、生きる。 サルトル12歳までの自伝。「読む」と「書く」の二部に分かれている。言葉に魅入られ、物語/文学に自らを賭けようとした少年がやがてそれに幻滅し訣別するまで。 サルトル少年(作中ではプールーという愛称で呼ばれる)は1905年に生まれて間もなく海軍士官の父親を亡くし、母親とともに彼女の実家で暮らすようになる。兄…
コメント:0

続きを読むread more

『嘔吐』 ジャン‐ポール・サルトル

孤独の発明。 新訳で再読。アントワーヌ・ロカンタンは30歳の独身青年で、港町ブーヴィル(架空の町)に滞在して、18世紀の侯爵ロルボンに関する本を書いている。金利収入で暮らしていける一種の高等遊民の彼は、図書館で会う「独学者」と短い会話を交わすか、居酒屋の女主人と情事に耽るほかには人付き合いがなく、執筆に時間をあてている。そんなある…
コメント:3

続きを読むread more

『ビリティスの歌』 ピエール・ルイス

夜の女王。 高等中学時代、同年輩のジードやヴァレリーをその絢爛たる才能で圧倒したピエール・ルイスが24歳のときに発表した詩集。彼はこの詩集を、紀元前6世紀のギリシア女流詩人ビリティスの詩の翻訳だと偽って発表した。若くして古代ギリシア詩に関する該博な知識を身につけ、徹底的な研究を積み重ねて当時の詩風を自家薬籠中のものとして臨んだ創作…
コメント:0

続きを読むread more

『ゴプセック 毬打つ猫の店』 バルザック

欲望の文学。 「ゴプセック」の語り手、代訴人のデルヴィルは若いころ「中庭もない、じめじめと薄暗い」パリのアパルトマンで暮らしていた。隣に住む高利貸のゴプセックは質素な生活をしているものの、実際には世の中を動かせるほどの巨万の富をもっていた。ある日ゴプセックのもとを一人の貴婦人が訪れる。レストー伯爵夫人。彼女は愛人が払えなくなった手…
コメント:0

続きを読むread more

『パリの憂鬱』 ボードレール

パリ情景。 異なる翻訳で再読。中世の暗い影をとどめたパリは、第二帝政下の1850年代後半から60年にかけて、整然として明るい近代都市へと急速に相貌を変えていく。「19世紀の首都パリ」(ベンヤミン)が、人の心の変化にも増して速やかに移り変わっていくのを目にした『悪の華』の詩人は、「同時代の現実に真っ向から立ち向かい、その急速な生活の…
コメント:0

続きを読むread more

『カルメン コロンバ』 メリメ

呪縛。 中篇を2篇収録する。どちらもタイトルになっているヒロインが小説の核になっている。 ビゼーの歌劇原作として名高い「カルメン」。考古学者の語り手はスペインのアンダルシア地方へ調査旅行に出かけた際に山賊ドン・ホセと出会い、獄中の彼から、彼と一人の女の愛憎の物語を聞かされる。由緒ある家に生まれたドン・ホセはもと軍人で、セビリ…
コメント:0

続きを読むread more

『青い麦』 コレット

君と夏の終わり。 16歳のフィリップと15歳のヴァンカは幼なじみで、毎年夏になるとそれぞれの両親とともにブルターニュの海辺へやって来る。彼らはまるで兄妹のように親密だった。しかし今年は去年までとどこか違う。フィリップは、少年のようなヴァンカが汚れた格好で向かうエビ取りに同行しても心楽しまず、ヴァンカのほうでもフィリップの何気ない言…
コメント:0

続きを読むread more

『行動分析学入門』 杉山尚子

行動から人間を見る。 行動分析学は1930年代に米国の心理学者B・F・スキナーによって創始された心理学の一体系で、人間や動物の行動全般を分析する。ここでいう「分析」とは原因を明らかにするというほどの意味だ。「人間や人間以外の動物の行動には、それをさせる原因があるのであり、その原因を解明し、行動に関する法則を見いだそうとする科学が行…
コメント:0

続きを読むread more

『チャンドス卿の手紙 アンドレアス』 ホフマンスタール

夢の器。 再読。短篇小説4作と未完の長篇小説「アンドレアス」の完成稿を収録する。このうち「六百七十二夜の物語」「バソンピエール元帥の体験」「アンドレアス」にホフマンスタール文学の特徴が顕著と見る。描かれるのは、夢と現実の境界が消滅して、両者がひとつに溶け合う世界。「現実と夢、生と死、内部と外部、高い世界と低い世界、そういった対立が…
コメント:0

続きを読むread more

『ガリレオの生涯』 ブレヒト

科学者の倫理。 17世紀初頭のヴェネツィア。数学者ガリレオはひとつの真理を発見する。これまでは地球が宇宙の中心であり、他の天体は地球の周囲を回っていると思われてきた(天動説)。しかし実際には、地球が太陽の周りを回っている(地動説)。コペルニクスが主張したとおりであり、彼は正しかった。かつては「信仰」が鎮座していたところに、いまでは…
コメント:0

続きを読むread more

『ゲオルク・ビューヒナー全集』 ビューヒナー

科学者の文学。 ビューヒナーが短い生涯のうちで著した文学作品4作のほか、政治的文書、詩やエッセーや学校時代の作文、書簡、自然科学論文、関係者によるビューヒナー回想文、小伝を収録する。文学作品に関しては、短篇小説「レンツ」、戯曲「ヴォイツェク」「ダントンの死」の3作を岩波文庫(岩淵達治訳)で読むことができる。残る1作の「レオンスとレ…
コメント:0

続きを読むread more

『ヴォイツェク ダントンの死 レンツ』 ビューヒナー

狂気の解剖。 再読。1813年にヘッセン大公国の首都ダルムシュタット近郊に生まれ、1837年、チフスのために23歳と4ヶ月で逝去したゲオルク・ビューヒナーの戯曲2篇と短篇小説1篇を収録する。いずれも作品の主人公は実在の人物をモデルにしている。 「レンツ」はビューヒナー唯一の短篇小説で未完。主人公のヤーコプ・ミヒャエル・ライン…
コメント:0

続きを読むread more

『ツァラトゥストラ』 ニーチェ

生の舞踏。 異なる翻訳で再読。1881年、スイスのシルス・マリアに滞在していたニーチェは、シルヴァプラーナ湖畔の森を散策中に「永遠回帰」の啓示を受ける。本作はその告知を主題に据えて執筆された(全4部のうち3部まではどれも10日前後で書き上げたとニーチェは述べているが、これは彼らしい虚言であり実際は推敲が重ねられている)。先に結論を…
コメント:1

続きを読むread more

『ニーチェ・セレクション』 渡邊二郎編

ニーチェ思想のアンソロジー。 ゲーテはこう言った。「人格であることは地上の子らの最高の幸福である」。ニーチェはこう言った。「人間とは克服されるべきなにものかである」。自己実現と自己超克。二人のあいだには100年の懸隔がある。 本書は6部構成。まずニーチェの生涯と思想の紹介。そのあとニーチェ思想がテーマごとに編まれる。「人生と…
コメント:0

続きを読むread more

『道徳の系譜学』 ニーチェ

道徳の価値。 『善悪の彼岸』は『ツァラトゥストラ』の注釈書として書かれた。その『善悪の彼岸』の補遺として書かれたのが本書『道徳の系譜学』だ。「論文など書かない」といったニーチェにしては珍しく断章形式ではなく論文形式で書かれており論旨を追いやすい。収録されているのは「「善と悪」と「良いと悪い」」、「「罪」「疚しい良心」およびこれに関…
コメント:0

続きを読むread more

『善悪の彼岸』 ニーチェ

苦難の価値。 猛々しく生きよ。ニーチェの思想を要約するとその一言に尽きる。彼にとって生とは、「本質において、他者や弱者をわがものとして、傷つけ、制圧すること」であり、「抑圧すること、過酷になること」であり、「自分の形式を(他者に)強要すること」、「(他者を)自己に同化させること」、「他者を搾取すること」だった。弱肉強食の世界観。生…
コメント:0

続きを読むread more

『ヒュペーリオン』 ヘルダーリン

生の勝利。 新訳で再読。18世紀末のギリシア。ティーナに生まれた青年ヒュペーリオンは、よき師、よき友とめぐり会うが、その両方をわけあって失う。傷心の彼を癒してくれたのはカラウレアの乙女ディオティーマだった。美の理想を体現しているような彼女をヒュペーリオンは崇拝に近い心で愛し、彼女もまた彼の希望に応じる。ちょうどその頃露土戦争が勃発…
コメント:0

続きを読むread more

『チリの地震』 ハインリヒ・フォン・クライスト

反親和力。 再読。短篇小説6篇とエッセイ2篇を収録する。表題作は1647年にチリで発生したサンチャゴ沖地震を背景に、人間の親和の不可能性を暴き出す。互いを想い合う若い男女がいて、けれども親に許されず、彼らの仲は引き裂かれる。人目を忍んで逢瀬を重ねた末に、女は男の子をみごもり、これが市中の醜聞になる。女の家は市でもっとも富裕な貴族だ…
コメント:0

続きを読むread more

『カフカ寓話集』 池内紀編訳

寓意の問題。 本書には全部で30の短篇が収録されている。このうち比較的有名なのは「巣穴」「断食芸人」「歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族」だろうか。「巣穴」は「カフカ的」といわれるような不安が主題の物語で、もぐらもどきか、もぐら人間か、そういう存在が自身の地中生活を述べていく(後段で少し考えてみたい)。「断食芸人」は、いまは廃れ…
コメント:0

続きを読むread more

『カフカ短篇集』 池内紀編訳

可笑しなカフカ。 再読。カフカは可笑しい、そのことを教えてくれた池内紀訳のカフカ。管理人にとってカフカ発見の本であり思い出深い。彼の文学の特徴は短篇にこそ顕著だと思う。シュールさ、とぼけ、ユーモア、読者を突き放す展開、核心部分が欠如したような叙述――それらが短い分量に凝縮されてある。ときに意味不明、宙ぶらりんな終わり方に置き去りに…
コメント:0

続きを読むread more