テーマ:海外の小説

『森のバルコニー/狭い水路』 ジュリアン・グラック

森の生活。 時は第二次世界大戦初期。1939年9月にドイツ軍はポーランドに侵攻し、英仏両国がドイツに対し宣戦布告、戦争は本格化する。わずか3週間でポーランドを制圧したドイツはしかしその後半年以上にわたって攻勢に移らず、フランス軍は国境を隔てて対峙したまま次第に士気を下げていく。厭戦ムードが軍隊内に濃く漂いはじめる。本作の舞…
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『アンデルセン童話集』 アンデルセン

再会する物語。 「おやゆび姫」「皇帝の新しい服」(はだかの王様とも呼ばれる)「丈夫なすずの兵隊」「みにくいアヒルの子」「マッチ売りの少女」「人魚姫」「絵のない絵本」など有名な作品を書き、全世界で親しまれている偉大な童話作家の作品を24篇収録する。多くの人がかつて幼いころに読んだだろう作品を再読して意外だったのは、童話という語に付き…
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『ハドリアヌス帝の回想』 マルグリット・ユルスナール

目を見開いて。 老齢の第14代ローマ皇帝ハドリアヌスが義孫のマルクス・アウレリウスにあてた書簡で自らの生涯を回想する、という形式で書かれた歴史小説。歴史的事実と著者による創作が入り混じっているが、綿密な調査に基いて書かれた本作に響く皇帝の声が虚実といった枠を超えて読者の胸を打つひとつの見事な肖像を形作っている。 ハドリアヌス…
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『地上の見知らぬ少年』 J・M・G・ル・クレジオ

無垢の生。 世界は美しい。それを証するために、はじめて地上に降り立った少年がいたとしたら彼の目にはどんなふうに世界が見えるだろうかと仮定し、断章形式で綴ったエッセイ。無垢の目は地上のあらゆるものごとに驚き、感嘆し、美を見出す。著者によるとこの少年とは彼自身であり、おそらくは読者自身でもあるという。彼は「あてもなくぶらつき、理屈抜き…
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『アフロディテ』 ピエール・ルイス

古代風俗。 プトレマイオス王朝末期、紀元一世紀のアレクサンドリアで、クリュシス(黄金の女)とあだ名される娼婦を知らぬ男はいなかった。類ないほどの美しい身体をもち、愛の快楽に耽り、七年のあいだ一人で寝たのは三晩しかない二十歳の女。その彼女を見かけて恋に落ちたのは、女王ベレニケの愛人である美貌の芸術家デメトリオス。彼は女に近づきわがも…
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『オデュッセイア』 ホメロス

王の帰還。 アキレウスや大アイアスなどの勇士を失ったものの10年続いたトロイア戦争はギリシア連合軍の勝利に終わった。しかし帰国直前に総大将アガメムノンと弟メネラオスが喧嘩になり、その結果ギリシア勢はいくつかの集団に分かれて勝手に帰国することになる。無事帰国できた者たちがいる一方で不幸に見舞われた者たちがいた。アガメムノンは祖国に辿…
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『イリアス』 ホメロス

兵どもが夢の跡。 紀元前1300年頃(推測)、スパルタ王家の美女ヘレネは婿メネラオスを迎えて王妃となるが、夫の留守中にトロイアの王子パリスに誘惑されて駆け落ちしてしまう。王妃を奪還するべく、彼女の夫メネラオスの兄、ミュケナイ王アガメムノンはギリシア各地の諸王国の軍勢を集めてトロイアへ遠征する。総大将アガメムノンの率いる連合軍には智…
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『バートルビーと仲間たち』 エンリーケ・ビラ=マタス

もの書かぬ人びと。 25年前に発表した小説の内容に憤った父親の口述を筆記したことがきっかけで以後ペンをとらなくなった書かない作家である語り手が、同じく書かないことを選択した作家(または書けなくなった作家)たちの足跡を辿っていく。書かない作家という矛盾した分類の鍵言葉となるのは「バートルビー症候群」だ。メルヴィルの短篇の主人公、何々…
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『世界終末戦争』 マリオ・バルガス=リョサ

闇の奥。 19世紀末。ブラジル内陸部の奥地、バイア州カヌードスの村。荒廃した農地をあやしげな集団が不法占拠する。集団のリーダーと思しき人物は紫色の長衣をまとった長身の男でコンセリェイロと呼ばれている(カウンセラーといった意味)。ブラジル国内でもっとも貧しい人々にキリスト教の教えを説いてまわるうちにいつしか聖者と崇められるようになっ…
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『アウステルリッツ』 W・G・ゼーバルト

仄暗い記憶の底から。 数十年前にロンドンから訪れたベルギーで、語り手は巨大なアントワープ中央駅に魅せられたようにメモやスケッチを熱心にとっている一人の男と出会う。彼はウェールズの建築史家でアウステルリッツといった。建築物とそれにまつわる歴史を憑かれたように語る彼と語り手は親しくなる。ロンドンに帰ったのちも二人の親交は続く。しかしど…
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『この世の王国』 アレホ・カルペンティエル

血と暴力の歴史。 革命に次ぐ革命に揺れる1750年代から1820年代までのハイチの歴史を4部構成で描く。 第一部。フランス人の経営する農場で奴隷として酷使されているティ・ノエルは仲間のマッカンダルを尊敬している。彼はヴードゥー教の祭司で、労働で片腕を失ったあと脱走して奴隷たちの指導者となり白人たちに毒の呪いをかける。家畜たちがば…
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『チャパーエフと空虚』 ヴィクトル・ペレーヴィン

夢の境界。 ロシア内戦時のトヴェーリ、雪の降る二月。語り手のピョートル・プストタ(空虚の意味)青年は詩人で、「好ましからざる新聞」に詩を発表したとして秘密警察に追われてペテルブルグから逃げてきた。並木通りを歩いていると旧友に声をかけられて、ついていくと彼も秘密警察の一員でピョートルは自衛のため応戦して彼を殺してしまう。そのあとで一…
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『プラテーロとわたし』 J.R.ヒメーネス

ねえ、プラテーロ。 1956年(それは彼の死の2年前だった)に、抒情詩の発展に貢献した功績を評価されてノーベル文学賞を受賞したヒメーネスはアンダルシア出身、若くして名声を得るが父の死に衝撃を受けてノイローゼの症状に苦しむようになり、療養のためマドリードからふるさとのモゲール町に帰る。豊かな自然が彼を癒す。のどかな田園生活を送る彼の…
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『ガルガンチュアとパンタグリュエル』 ラブレー

轟く哄笑。 「フランス語がようやく書き言葉として認知され」つつあった1532年、リヨンにて『ガルガンチュア大年代記』という本が出版される。アーサー王物語と絡めた巨人ガルガンチュアの冒険物語で、ラブレーはこれの続編を執筆する。それが『パンタグリュエル』だ。パンタグリュエルはガルガンチュアの息子という設定で、彼の活躍が述べられる。その…
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『幼なごころ』 ヴァレリー・ラルボー

忘れない日々。 子どもたちの物語を10篇収録する。はじめの「ローズ・ルルダン」を読み終えたときにもうこの短篇集が自分にとって特別な一冊であることを確信して間違えなかった。この短篇は、ある女優が著者らしき人物に寄宿学校時代の恋愛について語るという内容で、彼女が恋したのは年上の少女だった。これは叶わず彼女は恋心を胸に秘めたまま相手と離…
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『消去』 トーマス・ベルンハルト

呪詛、えんえんと。 ローマでドイツ文学の個人教授をしている語り手ムーラウはオーストリア出身。大貴族の末裔でありヴォルフスエック城で暮らしていたが家族に嫌気が差して故郷を離れ、世界各地をめぐったのちローマに落ち着いた。家族は彼のほかに両親と兄、妹が二人。彼らは精神的なことがらに無関心で(家には先祖から伝わる五つの書庫があるのに彼らは…
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『ルバーイヤート』 オマル・ハイヤーム

悩むより楽しめ。 11世紀から12世紀にかけてペルシア(現代のイラン)に生きた詩人の四行詩を100首収録する。現存する写本のうち15世紀のものは500首を越えるが、後代の研究により真贋の判定が進んで写本のなかにほかの詩人の作品も混じっていることが明らかにされ、本書に収録されている100首はその選定結果を踏まえたものになっている。 …
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『うたかたの日々』 ヴィアン

不思議の国の恋人たち。 青年コランはパーティで美しいクロエと出会い、恋に落ちる。愛し合う二人は豪華な結婚式を挙げて周囲に祝福され、前途には幸福な日々が待っているように見えた。けれども新婚旅行の最中にクロエは病気になり、咳が止まらなくなる。医師の診断によると肺のなかで睡蓮が生長しているという。この病気を治療するためには水の摂取を控え…
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『危険な関係』 ラクロ

危険なゲーム。 未亡人のメルトイユ公爵夫人は情人ヴァルモン子爵に、姪のセシルを誘惑するようそそのかす。セシルの縁談相手であるジェルクール伯爵はかつてメルトイユ公爵夫人の情人だったが彼女を捨てたのであり、これは彼への復讐だった。ヴァルモンは貞淑なツールヴェル法院長夫人を誘惑するかたわらで、情人の願いを容れてセシルへの誘惑を開始する。…
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『悪魔のような女たち』 バルベー・ドールヴィイ

悪の花。 悪魔的な魅力を備えたヒロインたちの物語を6篇収録する。女たちはその美しさで、その欲望で、なによりその謎で男たちを翻弄する。 「深紅のカーテン」は、ある田舎町の家の前を通りかかった子爵がかつてその部屋で起きた事件について物語る。子爵は若き士官だったころにその家に下宿していて、その家にはアルベルトという美しい娘がいた。…
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『タタール人の砂漠』 ディーノ・ブッツァーティ

あなたの人生の物語。 若きジョヴァンニ・ドローゴ中尉は辺境のバスティアーニ砦に配属される。生まれ育った町から遥か遠い場所、険しい山道をこの道でいいのかと不安になりながら進んでいく。山奥でようやく将校を見かけ、人に会えた嬉しさで声をかける。将校は大尉で、ドローゴは上官に砦の様子を聞くがあまり愉快な答えは返ってこない。砦は北の王国との…
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『死の勝利』 ガブリエーレ・ダヌンツィオ

腐乱の愛。 ジョルジョ・アウリスパ青年は年上のイッポリタと不毛な関係を二年続けている。女への執着は愛情というよりは肉欲ゆえであって、交われば激しい官能の歓びを得られるもののそれは一時的でしかなく、ことが済んだあとでは自分を縛るような女を鬱陶しく感じずにはいられない。イッポリタは人妻だがジョルジョへの恋ゆえに夫のもとを逃げ出して彼と…
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『ズリイカ・ドブソン』 マックス・ビアボーム

麗しのズリイカ。 世界中で美しさを知られた奇術師のズリイカ・ドブソンは祖父の住むオックスフォードにやって来る。駅に降り立った彼女を見かけただけでその場に居合わせたすべての男たちは彼女に恋をしてしまい、ぞろぞろと行列をなしてついて行く。ドーセット公爵はオックスフォード大学の学生で、彼もまたズリイカにはじめての恋をして、ズリイカも彼に…
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『大いなる遺産』 ディケンズ

人間の気高さについて。 19世紀のイギリス。テムズ河近くの村。両親を亡くして姉夫婦と一緒に暮らすピップ少年は墓地で一人の囚人に遭遇する。脅迫されて少年は囚人の脱走に協力する。忌まわしいこの出来事はやがて過去となり、ひょんなきっかけからピップは村の大きな屋敷へと連れていかれる。荒れ放題で廃墟のようなこの屋敷の主人ミス・ハヴィシャムは…
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『マンク』 マシュー・グレゴリー・ルイス

破戒。 中世のマドリード。この町の修道院長アンブロシオは30代の若さで今の地位に昇りつめた敬虔で学識ゆたかな僧侶だ。もとは捨子であったのが修道院に拾われて教育され、めきめきと頭角をあらわした。彼の名は尊敬と畏怖の念をもって人々に口にされた。彼を崇め、ついには愛するようになったマチルダは、ロザリオと変名し、性別を偽って修道院に入門し…
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『ロマン』 ウラジーミル・ソローキン

文学の破壊。 舞台は19世紀のロシアの小村。この故郷の駅に主人公の青年ロマンが降り立つ場面から小説ははじまる。彼は首都で優秀な弁護士として暮らしていたが退職し、画家として暮らすために帰郷したのだった。亡き両親に代わって彼を育ててくれた地主の叔父夫婦をはじめ、村の人々はみなあたたかく彼を迎えてくれる。美しい自然の景色は都会のあわただ…
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『感情教育』 フローベール

甘い生活。 18歳のフレデリック・モローは、セーヌ河をゆく船上で美しい人妻に心を奪われる。彼女の名前はアルヌー夫人。新聞社を経営する夫と二人の子どもをもつ貞淑な女だ。彼女の幻影がいつまでもフレデリックの脳裡から去らない。彼は法律を勉強するためパリに上り、夫人への憧れを秘めたままアルヌー家に出入りして恋愛成就の機会を窺う。望みは薄い…
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『死せる魂』 ゴーゴリ

おかしくかなしいロシア。 元役人の独身中年チチコフはロシア各地を旅している。彼の旅には目的があって、地主たちから死んだ農奴を買い集める。うまくやってただで譲ってもらう。その理由は地主たちには伏せているが、彼は死んだ農奴たちを抵当に入れて国の機関から金をだましとろうと目論んでいたのだ(当時のロシアでは7年ないし10年に一度人口調査が…
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『神曲』 ダンテ

怒りの叙事詩。 時は1300年。「正道を踏みはずし」、暗い森に迷いこんだ35歳のダンテのまえに、古代ローマの大詩人ウェルギリウスがあらわれる。ダンテの永遠の想い人であり今は天国にいるベアトリーチェに懇願され、彼は地獄を案内しようとダンテに告げる。尊敬する詩人に導かれ、ダンテは地獄をめぐり、続いて煉獄の山を経て、ベアトリーチェの導き…
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『倦怠』 アルベルト・モラヴィア

おまえがほしい。 富裕な家庭で育った語り手は35歳になる今も定職に就くでなく、趣味で絵を描いてその日その日を気ままに暮らしている。彼は幼いころから倦怠感に苦しめられてきた。この感覚は語り手によると他者あるいは事物とのつながりの欠如状態とでもいうべきもので、何かしたいと熱心に望みながら同時に何もしたくないと感じ、家にひとりきりでいる…
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